勝利余韻吹き飛ぶ…FC東京の五輪世代2人が規律違反で自宅謹慎
新型コロナウイルスに感染するリスクをゼロにはできない。それでも、限りなくゼロに近づける努力を積み重ねなければいけない状況が続いていくなかで、柏木のケースやガンバが直面している現状を当然知っている波多野と安部が取った行動は、あまりにも軽率すぎるという誹りを免れない。 ただ、チーム内の規範を破ったのが初めてであり、波多野と安部が深く反省している状況も鑑みて、謹慎期間は「5日程度を見込んでいる」と明かした古矢部長は、今後に関してさらにこう続けた。 「その間にPCR検査を実施して、陰性であることが医学的にもしっかりと確認でき次第、チームの方に戻すという方針を決めています」 厳格な指導方針で知られる長谷川監督も「チームの処分が解ければ、現場としてはまた使っていこうと思っています」と波多野と安部の今後に言及した上で、こうつけ加えることも忘れなかった。 「今日の試合に出場した選手たちが非常にいいパフォーマンスをしたので、そういうところを加味しながら、メンバーというものはまた決めていきたい」 波多野に代わってゴールマウスを守った33歳のベテラン、児玉剛は仙台戦がJ1リーグで2試合目の出場だった。関西大学から2010年に加入した京都パープルサンガで出場機会を得られず、愛媛FC、モンテディオ山形とJ2の舞台で179試合にわたって研鑽を積み重ねてきた。 2019シーズンから加入したFC東京でも、守護神・林彰洋に続くセカンドキーパーとして、U-23チームが参戦していたJ3リーグでプレーした試合もある。波多野が台頭した昨シーズンはさらに序列を下げたが決して腐らず、いつ出番が訪れてもいいように心身のコンディションを整えてきた。 安部が主戦場とするインサイドハーフで、今シーズン2度目の先発を果たしたレフティー、三田啓貴は小学生年代からFC東京のアカデミーで育った生え抜きだ。明治大学をへてFC東京でプロになり、仙台とヴィッセル神戸へ移籍したなかで2019年夏に古巣への復帰を果たした。 昨シーズンは明治大学の後輩でもある、豊富な運動量を誇るルーキーの安部が、新型コロナウイルスによる中断明けからポジションを奪取。シーズン中に30歳になった三田も、右足小指のつけ根を骨折し、長期離脱を余儀なくされたキャプテンの東慶悟の穴を懸命に埋めながら26試合に出場した。 迎えた今シーズンもキャンプから好調をキープ。長谷川監督をいい意味で悩ませ、昨シーズンから採用してきた[4-3-3]の中盤における、さまざまな組み合わせを思い描かせてきた。 「三田がずっと調子がいいのはわかっていたので、森重(真人)をアンカーで起用したときに、上手く組み合わせて使いたいと考えていた。その意味では、今日の試合で森重と東とで非常にいい形で中盤をコントロールしてくれたことは、チームにとって大きな収穫だったと思っています」 仙台戦は前半24分にセットプレーから先制を許すも、わずか2分後にU-24日本代表に選出されている22歳のFW田川亨介が利き足の左足から強烈なミドルシュートを突き刺す。さらに前半終了間際には、東とのワンツーで左サイドを抜け出したエース、FWディエゴ・オリヴェイラが技ありの勝ち越し弾をゴール右隅に決め、その後の仙台の反撃を児玉がシャットアウトした。 「児玉にしても、いつ試合に出てもいいような準備を日ごろからしてくれている。(三田とともに)今日は素晴らしい仕事をしてくれたと思っています」 国際Aマッチデーに伴ってJ1リーグ戦が中断期間に入る一方で、FC東京は28日にYBCルヴァンカップのグループリーグ第2節の神戸戦に臨む。大会連覇を目指すFC東京は3日の第1節で、徳島ヴォルティスを1-0で下し、児玉と三田もそれぞれ先発フル出場していた。 PCR検査で陰性が確認されれば、5日程度の謹慎期間を経て、24日にも波多野と安部はチームに合流するだろう。もっとも、2人が不在だった仙台戦でチームが一丸となって逆転勝利をもぎ取り、代わりに先発した児玉と三田に指揮官から及第点が与えられたいま、自業自得の末に下げてしまった序列を再び上向かせる作業は、心身両面で大きな労力と努力が求められる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)