<ワンチーム>’20センバツ 山梨学院/中 秋季関東大会で成長したナイン 制球力光ったエース /山梨
◇打撃陣は機動力で逆転劇 2019年10月21日、山梨学院は群馬県で開かれた秋季関東大会で花咲徳栄(埼玉1位)との準々決勝に臨んだ。相手は甲子園の優勝経験もある実力校で、胸を借りるつもりで挑んだ㓛刀史也主将(2年)は「『ミスをしても笑ってプレーをしよう。下を向いたら負けだ』と試合前に話し合った」と振り返る。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「山梨学院不利」の予想を覆すように、エース・吉川大投手(同)の制球力が光った。秋季県大会からエースナンバーを背負い、変化球を軸に県大会では全試合で先発。優勝にも貢献したが、「県大会はただがむしゃらに投げていた感じ」と話すように、制球が定まらず、失点につながるケースもあった。関東大会までの約2週間は変化球の制球力を磨くことに集中。投球練習では打席に立ってもらったチームメートの意見を聞き、フォームの改善に取り組んだ。 「実力以上の力を発揮できた」という花咲徳栄戦は序盤こそ無我夢中で投げたが、変化球が低めに集まり、凡打の山を築くと自信を持てた。2-1で迎えた九回1死二、三塁のピンチもスライダーで三振に仕留め、四球を挟んだ後の満塁の場面も渡辺嵩馬(しゅうま)選手(同)の好捕で外野フライに打ち取り、センバツ出場の目安とされる「関東4強」を決めた。 吉川投手の直球と変化球には球速に違いがほとんどなく、打者は球種の見極めが難しい。吉田洸二監督(50)は「あの日はフォークがよく落ちた。1点で抑えられたのは大きかった」と振り返る。一方、バントなど得意の小技で少ない好機をものにした打撃陣も役割を果たした。四回、2四死球で無死一、二塁とした後、橘田陸斗選手(同)の送りバントで二、三塁とし、失策の間に同点に追い付いた。五回も渡辺選手のバントで好機を広げた後、小吹悠人選手(同)の三塁打で逆転に成功。吉田監督は「(1試合)4安打で2得点はたいしたもの」と評価する。 続く桐生第一(群馬1位)との準決勝では、外川温大(はると)選手(2年)が4打数4安打4打点と大暴れ。6-5で逆転勝ちし、26年ぶりの決勝に駒を進めた。 こんなエピソードもある。花咲徳栄戦の前日、選手たちは宿泊先のホテルでラグビー・ワールドカップ準々決勝の日本対南アフリカ戦をテレビ観戦した。格上の相手に果敢に挑む日本代表の姿を見て選手たちは心を揺さぶられた。橘田選手は「自信をもらった」、㓛刀主将も「これぐらいの気持ちで戦えば、どんな強豪校にも勝てるのではないかと思った」。チームの合言葉を「ワンチーム」に決めたのはこの時の感動が一つの理由になっている。【金子昇太】