【証言・北方領土】水晶島と国後島・元島民 佐藤健夫さん(2)
爺爺岳=故郷(ふるさと)
―水晶島とは地形が違いますね。 違います、違います。こう山があってね。そのすぐ、私たちの住んでた近くに爺爺(ちゃちゃ)岳ってあったんですよ。これがね、羅臼岳より高いんですよ。1,700メートルぐらいあってね。大きいです。それがね、こう、バーっとね、村から見ると、すごく、何ていうか、たくましくね、雄大だっていうことで、安心感っていうかね、それを見ながら暮らしたもんだから、それを見たいっていう願望がすごくあったんですよ。 今年もね、行けたんですけど、上陸はできたんですけど、結局、晴れなかったんですよ、雲に隠れて見えなかった、それがすごく残念なんですよね。やっぱりね、天気いい日は羅臼岳とかね、羅臼の展望台からも見えるんですよ、爺爺岳ね、ちらっとね。根室からも見えるかな。だけど、その近くから見た、その雄大さっていうのはね、全然違うからね、近くから見ると、ほんとに励まされるっていうかね、かっこよく。
―佐藤さんの故郷? そうですね、故郷っていうことで、一番強く感ずるのは、やっぱりその爺爺岳ですね。 ―国後島を見に行くことはありますか? やっぱりね、一番やっぱり見てかっこいいのはね、羅臼岳登ったときですね。僕、教員だからね、羅臼に6年いたんですけど、毎年ね、学校行事で、羅臼岳登山があるんですよ。だから、登って、頂上からね、国後が見えるんですよ。ちょっとこう浮いたように見えるんだよね、あれ、どういう関係かね。国後全体が浮いたような、はっきり見えるんでね、すごく、毎年懐かしく見ておりました。 ―その爺爺岳のふもとにお祖父さんのお墓がある。 あるんです。 ―場所も正確ですか? それはね、地図上にはちゃんと示されてますね。だから、行けるんだけど、結局、もう70年経つとね、その墓の、多分土葬でしょ、昔はね。もう草生えちゃって、木が生えちゃって、やっぱりわかんないっていう墓は五十何カ所あんですよね、北方領土にね。だから、行けないとこはやっぱり何カ所かあるんですよ。今はやっぱり熊ですね、危険あるからね、ハンターはついてくれるんだけど、やっぱ危ないし、もうみんな年寄りだからね、ちょっと歩いて行くのは。ちゃんとあることはあるんですから、ちゃんと調べれば行けるんだろうけど。 ロシア人はね、次に来たときまでに、ちゃんと見つけておくからって言ってくれるんですよ。だけど、そういうのをね、あんまり教えくれないっていうか真剣に調べてないんでないだろうか。だから、わかんないんですよね。だから、途中で祭壇をつくって、みんなで霊を弔うっていう、そういうことですよね。 ―できることなら、その場所まで行きたいですか? 行きたいですね。85人眠ってんですよ、その同じ集落の人ね、苦労してね、頑張った人たちの墓があるわけだから。