「兄弟から性被害」「親から暴力」帰る場所がない大阪・グリ下の若者たち。新しい“居場所”としてのユースセンター。ミナミの若者支援の今
2割が自宅外で寝泊まり。若者が置かれる厳しい状況
居場所は作れたものの、まだまだ課題は山積している。 センターのスタッフや今井さん自身も、「夜10時にセンターが閉まった後に『帰る場所』がない若者が多い」と感じていたが、ユースセンターの利用者にアンケートで聞いてみると、深刻な状況が明るみになった。 D×Pが7~10月、ユースセンターを利用した13~25歳の若者200人を対象に実施したアンケートでは、直近1カ月に24%が主に自宅以外で寝泊まりしていたことがわかった。回答者を成人に絞ると、その割合は33%まで上がった。 実家に戻れない理由がある若者たちは、友人や交際相手の家、またはネットカフェなどに寝泊まりしており、半数以上が宿泊場所を必要としている状態にあった。 回答者の平均年齢は17.6歳。最も多かったのが16歳の37人で、17歳が29人、13歳も12人いた。 D×Pでは、シェルター等の施設との連携などの対策の強化も視野に入れている。 「周りの大人や社会に伝えたいことは」という設問の自由解答欄では「生きにくい」「孤立している人に目を向けて」「さびしい、しんどい」と、世の中に対する叫びのような悲痛な声も寄せられた。 グリ下という場所についても「グリ下は居場所」「警察も橋の下にいる子どもたちに寄り添ってあげてほしい」「おうちに帰せばいいと思わないで」との声があがった。 《今の私を認めてくれて、たくさん話しかけてくれて、怒ってくれる人や好きになった人がいるからグリ下を抜けられない》 《未成年の居場所がない子たちを見守れる場所を増やしていってください》
大阪府や市との連携も
グリ下がニュースなどで注目を集め始めると、大阪府知事や大阪市長も視察に訪れ、行政からの注目も高まった。 ユースセンターがオープンした時期とも重なる2023年夏からは、グリ下の課題に対応するための府市・官民連携の「グリ下会議」がスタートし、会合を重ねている。 そこにD×Pも参加し、現場で感じる課題や必要な支援などを提案している。 ユースセンターの運営を含むD×Pの活動費の大半は寄付で賄われている。資金面の課題やNPOのみで出来る範囲の限界もあるため、各セクターで協力できる形を議論する場となっている。 9月にはD×Pは大阪市と連携協定を締結。調査による実態把握など、官民連携でどのように連携して対応していけるかを探っていく。 (取材・文=冨田すみれ子)