「兄弟から性被害」「親から暴力」帰る場所がない大阪・グリ下の若者たち。新しい“居場所”としてのユースセンター。ミナミの若者支援の今
グリ下でテントを設置。「長期支援や安全に集まれる場所の必要性感じた」
D×Pがまず始めたのは、グリ下でのテントの設置だった。 2022年8月からグリ下でテントを張り、16~25歳の若者を対象にフリーカフェを展開。弁当の配布などを始めた。 当時はまだ、グリ下の若者をサポートする支援団体もなく、なんとか若者たちと関わりを作り、支援に繋げようと努力を重ねた。 D×Pでは、LINE相談から食糧支援・現金給付などの実物支援につなげる「ユキサキチャット」を運営しているが、LINE相談という機会まで辿り着かない若者が多くいることを課題として感じていたという。 テントを出すと、1日20~40人の若者が訪れ、真夏の暑さや真冬の寒さも関係なく、何時間もテントに滞在する若者たちがいた。 テントでの雑談からの延長線上で相談を受ける中では、「親から暴力を受けている」「10万円稼いでも全部親に取られてしまう」「兄弟・親族から性被害を受けている」といった悩みを打ち明ける若者も。 必要に応じて、産婦人科などの病院や児童相談所、警察に同行し、緊急的な支援に繋げることも出てきた。 「長期的な支援や、安心して集まれる安全な場所の必要性を強く感じました」(今井さん) 「若者のセーフティーネットとなる居場所を作りたい」とユースセンターの開設を企画し、クラウドファンディングで活動資金を募った。 今では、年間延べ5000人が利用する場所となった。 ユースセンターは若者と一緒に意見を出し合いながら内装なども充実させ、共に作り上げるスタイルも大切にしている。 「学校の先生に虐待や経済的搾取などを相談しても何も対応をしてくれなかったり、家にいるとしんどいから離れたのに警察に帰らされたりといった経験をし、大人への不信感や抵抗感が強い子どもたちがたくさんいます。信頼関係を築き、頼れる大人がいることを知ってもらえれば」 病院とも提携し、1カ月に2回ほど助産師に来てもらい、気軽に相談できる環境を整えている。 医療や住居の支援のほか、生活保護の申請ができる場合は申請のサポートをすることもある。 グリ下には酒や市販薬のオーバードースの問題を抱える若者も少なくない。ユースセンターでは飲酒やオーバードースに関するルールもあり、常時スタッフが見守る体制を取っている。トラブルが起きるのを防ぐため、同所の利用人数にも制限を設けている。