食物や栄養が健康に与える影響を誇大に信奉する「フードファディズム」。煽っている者の正体とは…専門家「不安を掻き立てたところにインパクトのある情報を流し、洗脳する」
2024年3月、紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した消費者に、健康被害が多数発生したことが報告されました。現在も調査が進められるなか、「サプリメントに対しては、過剰に反応せず、メディアリテラシーをもって冷静に対処することが求められる」と語るのは、スポーツサプリメントの企画・開発に関わった経歴を持つ、立教大学特別選任教授の杉浦克己教授です。今回は、杉浦教授の著書『一般教養としてのサプリメント学』から、健康に生きるためのライフスキルを一部ご紹介します。 【図】「フードファディズム」7つの問題点 * * * * * * * ◆メディアリテラシー メディアリテラシーは、メディアの使いこなしとメディアが発信する情報の取捨選択を行う能力のことです(下図)。 例えば、全国放送するようなテレビ番組は嘘を言うはずがないと思い込んでいる人は結構多いものです。 また、取りあえずテレビの前に座ってその情報を漫然と受けていると、あまり頭を使いませんので、その情報をすべて鵜呑みにしてしまいがちです。 「クイズ番組は頭を使うよ」という反論もあるかもしれませんが、出演している解答者が真剣に考えている番組ばかりかどうかはわかりません。 筆者の経験からも、台本があったり、わざと間違えるように言われていることはあると思います。解答者が間違えているのを見て、「アタマが悪いな」と笑っている視聴者こそがオメデたいのかもしれません。 メディアも間違ったことを言うこともあるでしょうし、食品の有効性ばかりを特集していると、本来は医薬品ではないので即効性のあるものは少なく、やがてネタは尽きるでしょうから、いいネタを持ってこいと制作会社に丸投げしていれば、やがて捏造を招き、番組打ち切りのようなツケが回ってきます。
◆フードファディズムの問題点 フードファディズムとは、群馬大学名誉教授の高橋久仁子が紹介した考え方で、「食物や栄養が健康や病気に与える影響を誇大に信奉すること」です。 下図はフードファディズムの問題点を表しています。 (1)は健康によいという食品を食卓にどんどん増やしていけば、肥満につながるということです。何かを増やしたら、何かを減らさないといけません。 (2)は健康にいいものを食べているから自分は健康であるという錯覚でしょう。 (3)は安全性の確認が必要ということ、(4)は例えば親が動物性食品を食べない主義であっても、子どもの成長には多様な食品を摂らせたほうがよいということ、(5)は何らかの食品は危ないといって、その代替物として高価な食品を売りつけるような詐欺的商法があったとして、それを信じて加担してしまうこと、(6)は期待と不安で情報操作され、群集心理も影響して右往左往すること、(7)は「がん」に効くというような健康食品を信じて、適切な医療を受けないこと等を表しています。
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