フィンランドの国民食「カレリアンピーラッカ」…コメを包み焼きにしたパイ、国難を象徴する郷土料理です
ロシア北西部にカレリア共和国という行政区画がある。その一部はかつてフィンランド領だった土地だ。第2次大戦中にソ連軍が占領した結果、約40万人が故郷を追われ、フィンランド各地に散らばった。
朝食に食べる人が多い
そのカレリア地方の代表的な家庭料理に、「カレリアンピーラッカ」がある。コメを包み焼きにしたパイである。カレリア人の離散に伴って全土に伝わり、やがてフィンランドの国民食と呼ばれるようになった。
見た目はクリーム菓子だが、材料はライ麦粉と白米が主体で、それに牛乳、バター、塩だから、いわゆるスイーツではない。朝食に食べる人が多いという。
カレリア人団体が運営するヘルシンキ東部のカフェ「ビラ・サルメラ」で、焼きたてをごちそうになった。味はほのかにバターが香る程度で、甘くも辛くもない。ところが生地はカリカリで香ばしく、コメはふわりと軟らかく、そのバランスが何とも舌に心地よい。
バター入りスクランブルエッグをのせるのが正統派
そのままでもおいしいが、バター入りスクランブルエッグをのせるのが正統派だという。要はご飯に卵をのせるわけだから、相性は良い。きわめて素朴な組み合わせだけに、飽きずに毎日でも食べられそうだ。
店長でカレリア地方のフィンランド側出身というメリヤ・ナウマネンさん(62)が作り方を見せてくれた。工程は全て手作業だ。パイ生地に木の棒を押し当て、額に汗しながら、ぐりぐりと延ばす。全体を薄く均等に延ばさないとおいしく仕上がらないという。「この作業は機械にはできない」と胸を張った。
フィンランドでカフェに入れば必ず見つけられるだろう。値段は1個1~4ユーロ(160~650円)程度。スーパーでも買えるが、焼きたてに勝るものはない。
おすすめは老舗カフェ
ヘルシンキ中心部で食べるなら、1949年創業のカフェ「コンディトリア・ホペア」がおすすめだ。カレリア出身の初代オーナーが残したレシピが受け継がれ、遠方から訪れる客もいる。
受け継がれる民族の記憶
カレリア地方は寒冷地帯だ。人々はほぼ一年中ストーブをつけており、それをオーブンとして活用したため、パイのように高温で時間をかけて焼く料理が発達したという。