「セブン・ザ・プライス」がヨーカ堂などの買上点数増加と来店頻度向上に貢献 「値頃感のあるものを買うと他にも手が伸びる」
「セブンプレミアム」シリーズの中の品質を維持しながら、シンプルな商品作りで値ごろ感を追求したブランド「セブン・ザ・プライス」が、生活者の価格感度の高まりに対応して勢いづいている。 上期(2月期)に売上が前年比約2倍に拡大したことに加えて、イトーヨーカド―・ヨークベニマル・ヨークなどのスーパー業態の買上点数増加と来店頻度向上に貢献している。
12月25日、取材に応じたセブン&アイ・ホールディングスの北村成司グループ商品戦略本部副本部長は「『セブン・ザ・プライス』の購入者と未購入者を比較すると、購入者は買上点数が約2割多い傾向にあり、購入者の来店頻度も未購入者に比べて高まっている。 買上点数が増えるのは、値頃感のあるものを買われると他の商品にも手が伸びるからだと思う」と語る。 好調要因は、食パン・納豆・豆腐など購入頻度の高い“頻度品”を中心に、価値と価格のバランスを1品ずつ精査した点にある。 精査にあたっては、自社における松竹梅の品揃えや市場環境をしっかりと確認し、競合商品などにも目を光らせる。 「安売りではなくて、各カテゴリで価格がより優先される単品を1つ1つ慎重に考えた。『セブン・ザ・プライス』にはハンバーグはないが、松竹梅の品揃えが成り立つかを各カテゴリでよく考えてもらい開発を徐々に進めてきた」と述べる。 このようなプロセスを経て、「セブン・ザ・プライス」のアイテム数を2023年の約130品から直近では211品へと拡大。品揃え強化で高まる価格感度に対応し需要喚起につなげている。 「買い物は価値体験でもあるため、『セブン・ザ・プライス』においても品揃えの幅を少しずつ広げていったことが良かった」と振り返る。 品揃えと並んで重視するのは大容量化。 「唐揚げやコロッケなどの冷凍食品を中心に大容量化することで値頃感を打ち出した。販売価格では一見、値頃感は分かりにくいが、ユニットプライスでみると割安になっている。 昨今、このユニットプライスがより見られている印象を受ける」と述べる。 「セブン・ザ・プライス」をはじめ「セブンプレミアム」シリーズは、各カテゴリで一斉に値上げが実施された22年9月から追い風が吹いている。 「インフレ経験の始まりと言っても過言ではない22年9月から、価格に対する関心が強くなり『セブンプレミアム』の品質と値頃感が見直された。価格感度は年々高まり、特に24年は一層の高まりが感じられ本当にきめ細かくやらなければいけない年だった」と振り返る。 25年の春にはナショナルブランド(NB)の商品の各カテゴリで値上げが予定されており、ここが「大きな山」と見込み、今後、「セブン・ザ・プライス」の品揃え強化など「セブンプレミアム」に磨きをかける。 「今の延長線上では全く通用しないと考えている。ディスカウントではなく、価値とのバランスでお客様に受け入れられる価格を考えて商品開発を進めていき、新しい価値もしっかりお客様に提供したい」と意欲をのぞかせる。 価値伝達については、特にスーパー業態では現場力が物を言うという。 「セブン‐イレブンの一番の強さは2万店強の拠点数で、改廃せずに売場にしっかり置いてもらえる。スーパー部門でも、現場が一番。徹底的に売場づくりしている店舗とそうでない店舗と比べ買上点数が圧倒的に高い。現場が“よし売ってみよう”と思ってもらえるように情報発信をしっかりしていかなければならない」と力を込める。 なお「セブンプレミアム」シリーズの年間売上金額は前々期が1兆3800億円(3500品)、前期が1兆4500億円(3400品)。今期は、上期までで7780億円を達成し、通期で1兆5000億円(3500アイテム)を計画する。 衣料・住居関連商品を減らして食品を増やす方針のもと、アイテム数は、前期と比べて100品増やし、このうち食品に限って見ると前期に比べて300品増やした。