なぜ阪神“怪物新人”佐藤輝明は初の「4番・三塁」で近本を「やっぱスゲエ」と驚かす逆転満塁本塁打を放つことができたのか?
基本的に佐藤は、元阪神監督である名将、野村克也氏が分類したタイプにあてはめるとA型タイプである。ストレート待ちの変化球対応型。追い込まれてからパターンを変える打者も少なくないが、球種を絞り「ヤマを張る」というD型タイプも有効だが、ゼロか100かのリスクが出る。 だが、サンズのアドバイスは、“チェンジアップの対応に逆方向を意識せよ”というものだった。これはノムさんのいう打者分類のC型「打球方向を決める」にあたる。 打球方向を意識することで、必然、ボールを見る時間が長くなり変化球に対応できる。結果、引っ張ることになったが、ボール気味のチェンジアップに片手で反応できたのは、その意識が頭の端っこにあったからだろう。 メジャーリーグで本塁打を量産し全米を震撼させているエンゼルスの“二刀流”大谷翔平も日本時間1日のマリナーズ戦でチェンジアップをバットの先っぽで捉え8号本塁打にしたが、大谷も、またデータ主義にのっとったメジャー野球の徹底した“チェンジアップ攻め”に苦しんでいた。だが、前打席からの6球連続のチェンジアップを見逃さず、ロサンゼルスタイムズ紙などが、その「修正力」を称えたが、これこそ一流の打者に共通する部分だろう。 6回には再び一死満塁で打順が巡ってきた。マウンドのコルニエルは技巧派の野村とは一転して160キロを超えるストレートを武器にする超速球派。佐藤はまた1-2と追い込まれてから159キロのストレートをフルスイング。ドン詰まりだったが、恐れず振り切ったことで、打球はレフトの前に落ちた。この日、5打点目。 「1本で終わるより2本打てた方がいい。あの一打も大きかった」 セ・リーグの本塁打争いでは、ヤクルトの村上、山田の10号に続き、3位。そして打点は「24」に伸び、大山の「23」を抜き巨人の岡本の「25」に次ぐ2位につけている。もはや新人ではない。堂々たる主軸の数字だ。 公式戦で初めて守る三塁の守備でも魅せた。計3度の守備でミスがないどころか8回一死からは坂倉の三塁線を襲う強烈な打球をスライディングしながら逆シングルで捕球し、すぐさま体を変えてダイレクトで一塁へ送球した。近大時代は三塁が本職。 「ミスが起こりうるかと覚悟していた」という矢野監督も「反応がよかった。素晴らしかった」と及第点を与えた。 佐藤を「4番・サード」で抜擢した矢野監督も期待を超える結果に称賛の言葉しか出てこない。 「4番は体験入部のようなものだったが、何かしらこういうファンの人の記憶に残ることやビックリするようなことが起こせるのは、佐藤輝が何か持っているということ」 巨人に3.5ゲーム差をつけて首位を独走するが、ペナントレースのこの先、何が起きるかわからない。山も谷もある。そのリスクマネジメントとして重要なのがチームオプションの多さである。大山がスタメンを外れた理由は、今日3日のゲームがなくなったにもかかわらず“積極的休養”とされていて詳細は不明だが、矢野監督がサンズではなく佐藤を4番に抜擢した理由は、虎の将来を担うスラッガーへの先行投資であり優勝へのリスクマネジメントでもあった。 「4番を託すまではないが、経験させてみて、三塁というポジションもそうだが、今後いろんなことが起こり得る。三塁4番でいってみようかと」