92歳の女性評論家が「80歳で調理定年」を勧める訳 「総菜、外食、人に頼る」の工夫3つで快適な食を
あるお宅で母親が娘に、「あなたは女だからがまんして、お兄さんと弟に(食べ物を)あげましょうね」というのを聞き、まだ家父長的な発想をする人がいるのかと、ショックを受けました。 主婦と呼ばれる女性は、高齢になるまで「食生活の中心」にいたようにみえますが、それは食事の提供者としての「中心」でした。 家族の都合によって自分の食事がおろそかになったり、お昼ご飯は残りものですませるのが習慣になっていたりと、案外、主婦自身の「食」はいい加減だったのだと思います。
健康的な食生活を取り戻すには、やはり「トモ食い作戦」で、ご飯友だちを増やすのが有効です。家でご飯を食べられない子どものために「子ども食堂」があるように、1人暮らしの高齢者のためにも、もっと気楽な「じじばばカフェ」があればいいなと思っています。 1つの小学校区に一か所ずつくらい、高齢者が集まって、食べたり話したりできるような場所を作れば、そこが人との出会いの場にもなります。もしかしたら、散歩や趣味の仲間もできて、孤独感が薄れるかもしれません。
食をともにする機会が増えることは、人とのつながり、社会とのつながりを生み出し、それが生きるエネルギーになることは、間違いありません。 注1:農林水産省「令和5年度食育推進施策(食育白書)」2024。「図表2-3-4 低栄養傾向の者の割合(65歳以上・性・年齢階級別)」では、BMI20・0㎏/㎡以下を低栄養傾向の指標として設定している。 注2:厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」2024 注3:農林水産省「平成29年度食育推進施策(食育白書)」2018
樋口 恵子 :東京家政大学名誉教授/NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」名誉理事長