92歳の女性評論家が「80歳で調理定年」を勧める訳 「総菜、外食、人に頼る」の工夫3つで快適な食を
好きだった料理作りがめんどうくさくなり、冷蔵庫にあるハムやヨーグルト、食パンなどでちゃちゃっと食事をすませてしまっていたのです。 歳をとっておひとりさまになると、「買ってきた物をそのままテーブルに並べて食べる」とか、「冷蔵庫から出した残りおかずを立ち食いして食事は終了」という話を聞きます。そんな食事では栄養バランスが崩れ、食事量も減ってしまいます。 私も、まさにそんな状態でした。かなり無精になっていたのです。
■「食い改め」体調を取り戻していった 体調を崩し、「これではいけない。まともな食生活が高齢者の健康の基本なのに。このままでは、出かけることも人前に出ることもできなければ、生きる楽しみもなくなる」と深く反省しました。 そこから、三度の食事で、いろいろな食品をまんべんなく食べることを心がけ、「食い改め」ました。そうしてようやく、体調を取り戻していったのでした。 食生活改善策のなかでも効果的だったのが「トモ(友)食い作戦」です。
気の合う友に会い、一緒に食べることは楽しく、食への意欲が出ました。楽しい気持ちで食べることは、体にも心にもいい影響を与えてくれます。 少し前のものになりますが、「食育推進施策(食育白書)」[注3]に、食事をともにする頻度が高い人は孤食の多い人に比べ、食事のバランスがよく、食生活が良好な傾向との結果も出ています。 私は医師の娘と同居していますが、彼女とは生活時間帯が違うので、孤食になりがちです。そこで、週に2回、シルバー人材センターに私の食事作りをお願いしています。そして、その日に合わせて、私の助手など2~3人を誘って、一緒に食事をするようにしました。助手の食事は自分たちで調達します。
何人かで食卓を囲むと自然と食が進み、自ずと栄養もしっかり摂れるというものです。 もし、出かける元気があれば、友だちと外食を楽しむのもいいし、自宅に招いて、持ち寄りでも出前を取ってもいいので、ランチ会を開くのもいいと思います。 「同じ釜の飯を食う」ことで孤食を防ぎ、会話を通して人とのつながりができれば、体調の悪さも吹き飛ぶでしょう。 ■健康的な食事を取り戻し、生きるエネルギーに 昭和30年代に結婚して数年間、夫の転勤先の社宅で私が専業主婦をしていた頃のこと。