92歳の女性評論家が「80歳で調理定年」を勧める訳 「総菜、外食、人に頼る」の工夫3つで快適な食を
また、誰かと一緒に食事をするのも、若干の緊張感があって、いいものです。夫や近所の友だちと、週に一度くらい連れ立って外食に行くのも、生活に変化がつき、気晴らしにもなります。 名づけて「週1家庭外食堂」です。 ランチなら、値段もそう高くはありません。妻の調理定年に備えて、夫とおふたりさまで「週1家庭外食堂」の実践はとてもよい練習になりますし、友だちと2~3人で集まれば、いろいろな情報交換もできて、おしゃべりが息抜きにもなるでしょう。
「食べることは生きること」といわれますが、「食べること」の周辺にある便利なものを上手に利用して「生きること」が大事だと、知ってほしいのです。 食をおろそかにしてはいけません。「作らずとも食べること」を心がけましょう。 ■人と一緒の食事で、低栄養リスクを避ける 私は85歳の頃、食欲が落ち、低栄養になり、体調を崩したことがあります。いわゆる栄養失調です。いまの時代に栄養失調? と思われるかもしれませんが、高齢女性には珍しくないことなのです。
食育推進施策(食育白書)[注1]の結果をみても、女性の場合、65歳以上の20.7%、5人に1人が低栄養傾向にあり、85歳以上では27.9%に上っています。男性の場合、それぞれ12.4%、17.2%で、驚いたことに、男性より女性のほうが低栄養に陥りやすいという結果です。 栄養が足りないと、体力が低下するばかりか、転倒や骨折のリスクも高まるのであなどれません。 一方、男性の平均寿命が81.09歳で[注2]、女性より先に亡くなることを考えると(女性の平均寿命は87.14歳)、80代女性の多くが「おひとりさま」になる可能性大です。
おひとりさまになれば、夫の「飯はまだか」の束縛からは解放されるものの、自分で1人分の料理を作り、食卓を整えて食べることが億劫になります。しかしこれが実は、低栄養への入り口なのです。 私が低栄養になったきっかけは、家の建て替えでした。40年余り住んでいた家が古くなって、建て替えを余儀なくされた話は以前にもしました。が、これがけっこう大ごとでして……。 床が抜けるほどあった本類を整理し、不要な物を捨てて仮住まいへ引っ越し、新居ができるとまたそこへ移動して片づけと続けば、80代半ばの体には、さすがにこたえました。