最新技術で海洋ごみに挑む技術者がカッコよさにこだわる理由 目標は「昼は技術者、夜はジャズプレイヤー」
運命を変えた二瓶研究室
大学入学後、実験やレポートに追われる中で、運命を変える出会いがありました。吉田さんが製品化した「RIAD」の生みの親 の1人、東京理科大学理工学部土木工学科 ・二瓶泰雄教授(当時)です。大学で1、2を争う多忙しさといわれる二瓶教授の研究室で、吉田さんは1年間の卒業研究をして過ごし、その際に大学院に行く決意をしました。 ―――研究室は大変でしたか。 先生に急いで結果を報告するために廊下を走ったり、修士論文の発表前日の夜の22時ごろまで資料の修正に追われ徹夜で対応したり、とても大変でした。今思えば、学費以上に勉強させていただき、大変ありがたかったのですが、毎日研究に追われている日々でした。 ―――大学院を目指したのはなぜですか。 「国際学会に行ける」という話もあって、なんかカッコいいじゃないですか、国際学会に参加したっていう実績があったら(笑) 大学3年生の時に、現在所属する八千代エンジニヤリングのインターンシップに参加し、縁があって入社しました。
水質を追いかけた新人時代
入社した八千代エンジニヤリングは総合建設コンサルタント。道路や鉄道、ダムなど社会インフラの課題解決を図る会社です。施工以外の建設に関わる全ての業務に携わっていて、その1つが環境問題への取り組み。例えばダムをつくる際に、周辺の水質が悪くならないか、生き物たちが絶滅してしまわないかなど建設に関連する環境問題の調査も行います。 吉田さんは入社以降、アオコや赤潮などの水質問題を解決するための仕事に10年ほど携わっていました。ところが心に少しずつ変化が。 吉田拓司さん: 「この仕事をやっていて、自分の武器がないな、といったモヤモヤした気持ちになっていたんです」
30代半ばに第2の転機が訪れる
「強い専門性を武器にしたい」と考えていた吉田さん。そこで、学生時代にお世話になった二瓶教授に「研究の社会実装をしたい」と相談。川ごみモニタリング技術(RIAD)を紹介してもらいました。吉田さんは、これからの海洋プラスチックごみ問題を考えていく上では、必要な技術であると確信して製品化を目指しました。 プラスチックはサイズによって、5ミリを境にマイクロプラスチック、マクロプラスチックに分かれ、プラスチックの流出量を考えていく上では、サイズ別にどの程度流出しているかを把握する必要がありました。 二瓶教授が河川におけるマイクロプラスチック研究の第一人者だったこともあり、再び大学院に通い、働きながら博士課程で3年間研究を行うことになりました。