花粉症の根治を目指す―“舌下免疫療法”を今から始めるべき理由
◇舌下免疫療法を開始するのは花粉シーズンが終わってから
根治へのアプローチとして有効な舌下免疫療法は、そもそもなぜ効果があるのか。天野氏は「この治療法は、アレルゲン(スギ花粉)を含んだ薬剤を舌の下に入れて溶かし、口腔粘膜から吸収させることで徐々に体をアレルゲンに慣らしていくものです。」と述べる。 アレルゲンの吸収量が多くなりすぎて症状が強くなるリスクを下げるため、舌下免疫療法を開始するのは通常、花粉の飛散が終わった後だ。「6月頃が開始の目安になります。」と天野氏は説明する。
◇クリニックに通院せず、自宅で治療ができるのがメリット
さらに天野氏は言う。「舌下免疫療法は誰でもどこでも簡単に実施できるため、基本的に医療機関に通う必要はありません」。 とはいえ、初診時は対面で診察を受ける必要がある。「この治療法はアレルゲンを直接投与するためアレルギー反応が起こるリスクがあり、1回目の服用時は医師の見守りが必要になるからです。アナフィラキシーのような重篤な副反応はまれだといわれていますが、舌や口の中が腫れたり、かゆみが出たりするなどの軽い副反応が出る可能性があり、その場合は医師がすぐに対処します」。 1回目で問題がない場合、2回目以降は自宅などどこで服用しても構わない。薬も医療機関によってはオンラインで処方箋が薬局に送られ、そこから手元に郵送してもらうことができる。通院や薬の受け取りのために外出することなく治療が継続できることは、大きなメリットであると言えるだろう。
◇対象年齢は5歳以上。家族で始める舌下免疫療法
舌下免疫療法は5歳以上から受けることができる。つまり花粉症で困っている家族ならほぼ全員が治療に参加でき、皆で治療をするからこそ継続できるのもこの治療法のメリットと言える。実は、子どもに対する舌下免疫療法の安全性や効果について15歳未満の子どもと15歳以上の成人を対象に調査した研究*では、子どもと成人での治療効果に差はなく、治療患者は未治療患者よりも症状が有意に改善したことが報告されており、子どもで無投薬・無症状まで著明に改善した例が成人よりも多かったことも心強い。副反応の出現についても重篤なものはみられず、治療を中断する例はなかった。この結果からも、子どもでも成人でもスギ花粉の舌下免疫療法は効果的で安全であることが分かる。 天野氏は力説する。「近年、子どもの花粉症患者は増加傾向にあります。くしゃみや鼻づまりなどの症状は集中力を低下させるなど、お子さんの日常生活に悪影響を及ぼしかねません。お子さんがくしゃみを連発するなどの症状があれば、ぜひ一度検査を受けることをおすすめします。子どもの時期に治療を開始すれば、早めに完治に近い状態にまで改善することが期待でき、その後長きにわたって花粉症に悩まされる心配の軽減につながるはずです」。