花粉症の根治を目指す―“舌下免疫療法”を今から始めるべき理由
◇治療薬は供給不足が続く。始めるなら早めに
舌下免疫療法には1つ、切実な問題がある。保険が適用されるため、保険料3割負担の方は初診が4000~5000円、以降は毎月2000~3000円程度の費用となる。実はこの費用感と簡単さ、治療効果の高さから舌下免疫療法を開始する人が増加しており、製薬会社での生産が追いつかない状況が2023年から続いているのだ。 2024年現在も引き続き数量を限定した出荷が見込まれており、さまざまなクリニックで新規受付を中止するなどの対応がされ、今後の見通しはつきにくい状況だ。天野氏は「舌下免疫療法を希望する場合は治療を受け付けている医療機関を探し、早めの受診を」と提案している。
◇抗ヒスタミン薬やオマリズマブなど、治療選択肢は増えている
また天野氏は、「毎年花粉症に悩まされている人は舌下免疫療法に加え、花粉シーズンの前から治療を開始する“初期療法”を受けることも考えてほしい」とも言う。 初期治療で主に使用される“抗ヒスタミン薬”は、アレルギーの原因となる“ヒスタミン”のはたらきを阻害して、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった花粉症のつらい症状を抑える効果が期待される。この薬を早い段階から使用することで、花粉飛散のピーク時を含め症状をコントロールすることができ、重症化予防につなげることもできるのだ。実際に花粉症の治療ガイドラインでも、症状が出る前あるいは軽い症状の段階から治療を受けることを推奨している。天野氏は「私の場合、患者さんに花粉飛散が予測される2週間前から抗アレルギー薬を使用することをおすすめしています。」と明かす。 さらに、抗ヒスタミン薬のような従来薬を使用しても改善しない場合の治療として、2019年より抗IgE抗体オマリズマブを皮下注射するという新たな治療が保険適用にて受けられるようになっている。「オマリズマブは根治が期待できる薬ではなく毎シーズン、一定期間ごとの投与が必要になるが、この治療を行う患者も年々増えている」と天野氏は語る。
◇市販薬で我慢せず、受診を検討すべき理由
最後に、花粉症の治療ではもう1つ気をつけたい点があるという。それは市販薬に頼ることだ。「症状が軽い場合などでは、市販薬に頼ることも少なくないでしょう。しかし、市販薬は安全面を考慮し、有効成分の含有量が少ないため、十分に効果を感じられないこともあります」と天野氏。 近年は医師の処方が必要だった薬が市販薬として登場し、選択肢が広がってるものの、選び方はどうしての自己判断とならざるを得ない。天野氏は「市販薬の選び方が分からない、効果を感じられないといった人は医師に相談すべきだ」と強調する。「医師は患者さんの状況に応じてさまざまな治療を提案できるからです」 花粉症治療の選択肢は年々広がっている。将来的な症状の軽減・改善を真剣に目指す場合は、一度受診し医師に相談することが重要だろう。
メディカルノート