錦織 勝負の2015年シーズン始動
正月三ヶ日が終わって間もなく、テレビもラジオも錦織圭の「勝利」を伝えていた。 ブリスベン国際はATPツアーの中では一番下の『250』というカテゴリー。その1回戦、しかもダブルスだ。相手ペアのひとりはダブルス実績の高い超ベテランだったが、日本でその名前…ダニエル・ネスターと言ったところで、わかる人はかなりのテニス通に限られるだろう。報道では“金星”という表現もあったが、錦織は昨年2月のデビスカップでもこのネスターに勝っている。それでもこの取り上げよう、盛り上げようは、錦織の注目度が昨年までとは比べものにならない証拠。この調子だと全豪オープンが始まったら大変なことになりそうだ。
しかし「どんなに周りの状況が変わってこようとも、自分のすることはいつも同じ」と、錦織は大晦日にブログに綴っていた。 「自分の人生だし自分がいけるとこまで楽しんで進んでいきたい」 「誰かを越すとか、誰かに抜かれるとかではなく自分ができる最大の努力をする」 年越しの誓いはそう続いていた。この精神構造は天性によるものだけではないだろう。そうありたいという理想は誰もが抱いていても、多くの人は口には出せないものだ。積み上げてきたものとさらに積み上げていくものが、一つの太いパイプでつながっているという実感を持つ者でなければ、こうは言いきれない。昨シーズンの開幕前は一年を振り返った内容だったが、今回はひたすら前向き、ポジティブだった。 背後にマイケル・チャン・コーチの影はちらつくが、「楽しんで進んでいきたい」に本来の錦織らしさが表れていると感じた。ストイックな努力型のチャン・コーチの指導の下でもこのメンタリティは失われず、逆に質を高めて錦織テニスの魅力を支えている。 錦織は大丈夫だろう。何かに潰されるとか、誰かに阻まれるとか、そんな心配はもう及ばないところに立っているのかもしれない。 そして、冒頭の通り、2015年シーズンの幕は上がった。最初の舞台はオーストラリアのブリスベン。開幕からわずか2週間で全豪が始まるため、試合数をこなすためのダブルス出場であることは間違いない。シーズン初めにブリスベンで単複を戦うウォーミングアップは過去3年と同じやり方だ。ここから、かつて全豪オープンの会場でもあったクーヨン・ローンテニスクラブでのエキシビション大会を経て、全豪に入る。それが4年連続の錦織の開幕スケジュールパターンとなっている。