錦織 勝負の2015年シーズン始動
なぜそんなことに言及するかというと、実はこのウォームアップの方法に関してはトッププレーヤーも毎年頭を悩ませるところだからだ。シーズン開幕のこの週、ツアー大会はブリスベンとドーハ、チェンナイの3大会だが、同時期にオーストラリアのパースではホップマンカップという男女ペアによる伝統的な国別対抗エキシビション・イベントが行なわれている。また、シーズン開幕直前にはアブダビでトッププレーヤー6人によるエキシビション大会が今年7年目を迎えた。 2011年から3連覇するなど、近年の全豪オープンではもっとも成功をおさめているノバク・ジョコビッチは、アブダビでのエキシビションで肩ならしをし、公式戦には出場せずに全豪オープンを迎えるのが恒例だった。 が、今年はドーハに初出場。ダブルスにもエントリーしている。必勝パターンを変えてきたのは、昨年の全豪がベスト8止まりだったせいか。全豪の前に公式戦に臨むのは、09年にブリスベンで1回戦敗退して以来となる。 同じく全豪では過去4回の優勝を誇るロジャー・フェデラーは、2012年までは4年連続でアブダビからドーハというパターンで落ち着いていたが、2013年は実戦をこなさず全豪に臨んだ。そして昨年はブリスベンでシングルスのみ出場。今年もそのブリスベンを選んだ。 アンディ・マレーは今回、アブダビからホップマンカップというエキシビションの合わせ技だ。最も長い間、シーズン初めのロードマップを変えていないのはラファエル・ナダルで、09年からほぼ毎年、ケガなどで欠場した年以外はアブダビからドーハという経路で全豪オープンを迎えている。 皆、過去の成功と失敗を照らし合わせ、考え悩んで大事なスタートに挑んでいる。正解などないのかもしれない。不安定になりがちなシーズン初めだからこそ、心地好く、全豪へ自信を膨らませていくことが肝心だ。 今の錦織に少なくとも迷いは見られない。 「さらに自信をつけるためにも、シーズン最初の数大会が大事」 ブリスベンでの英語会見で語ったのは、シーズンを長い目で見据えた言葉だった。多少の浮き沈みは当然あるに違いないが、チャン・コーチも「1年の95%を健康な状態で戦うこと」を今シーズンの課題に挙げ、「それさえできればケイはもう一段上の舞台に到達する」と言っている。 錦織自身がかつてないほどワクワクしているというシーズンのスタート。それだけで、2015年の錦織はもう随分高いところへ跳んだような気がする。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)