日医工と富士通、医薬品製造現場でAI技術を活用した共同実証実験
日医工株式会社と富士通株式会社は5日、日医工の医薬品製造現場における、無菌室の入退室時の作業漏れ検知や製造技術者の早期育成に向けて、共同実証実験を実施していると発表した。実証実験では、富士通の行動分析AIサービス「Fujitsu Kozuchi for Vision」、および株式会社ブロードリーフの作業分析・業務最適化ソリューション「OTRS」「OTRS+AI」を活用しており、日医工の岐阜工場にて、11月19日から12月20日までの予定で実施されている。 【画像】ほこりを吸引する動作の検知 今回、両社が取り組んでいるのは、1)日医工の製造工程における作業漏れ検知の高度化、2)ベテラン技術者のノウハウ継承による、医薬品業界における製造現場の人材不足解決や、現場技術者の早期育成実現に向けての取り組み――の2つ。 1)では、日医工 岐阜工場の医薬品製造現場での作業において、リアルタイムに人の動作を検知する技術を搭載した富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi for Vision」を活用し、無菌室の入り口に設置した監視カメラの映像データから、入退室時に、無菌製剤の製造過程における適正かつ標準化された作業が確実に行われているかを分析。技術者の作業漏れをリアルタイムに検知できるかどうかを検証する。 適正かつ標準化された作業実施の再確認、および再実施を確実に行うことにより、非標準的な作業に起因する製品廃棄処分をゼロとし、その先に実現しうる無菌製剤の安定供給を目指して取り組むとのこと。なお、検知結果の現場技術者への通知方法については、アラーム音や警告ライトの点滅による喚起、スマートフォンの活用など、さまざまな仕組みを検討するとのこと。 一方の2)では、ブロードリーフの生産性向上・業務最適化ソリューション「OTRS」および富士通の作業分節AI技術を搭載した「OTRS+AI」を適用する。 ここでは、まず、ベテラン技術者の作業映像から、要素作業ごとに分割したデータを教師データとして作成してAIに学習させる。次に、経験の浅い技術者の作業映像を学習したAIが自動で作業分節したものと、先に作成した教師データとを並列表示し、教育指導者が比較検証しながら、経験の浅い技術者のスキルアップを促すとした。 これにより、技術者のスキルレベルを短期間でベテラン技術者のレベルまで引き上げることを目指す。また、技術習得時間の短縮だけでなく、動画による作業標準マニュアルの作成や、技術者の事前の動作シミュレーションなど、人材育成全体で効率化を図ることで、教育にかかるコストの削減を見込んでおり、従来比50%を目指すとのこと。
クラウド Watch,石井 一志