なぜドイツ製高級車は走りがイイのか? 新型アウディS5は“爽快感”に迫る
アウディの新型「A5」に設定された高性能バージョン「S5」に、大谷達也がフランスで乗った! アウディらしさ満載の4WDスポーツモデルの絶妙な味付けとは? 【写真を見る】新型S5の全貌(71枚)
クワトロ・スポーツ・ディファレンシャルギヤの効果
A5のフルモデルチェンジとあわせて、そのハイパフォーマンス版であるS5も新型に切り替わった。 新しいアウディA5が従来のA4とA5を統合したモデルであることは新型A5国際試乗会のリポートで記した。フルモデルチェンジを受けたS5も、したがって従来のS4とS5を引き継ぐ立場にあるわけだが、とりあえずデビューしたのはテールゲートを備えた4ドア・セダン、それにアウディ流にアヴァントと呼ばれるステーションワゴンの2タイプのみ。つまり、いまのところ2ドア・クーペや2ドア・コンバーティブルはラインナップされていない格好だ。 新開発のプラットフォーム「PPC(“プレミアム・プラットフォーム・コンバスチョン”の意味)」を使う点はベースのA5と同じ。ただし、エンジンはA5の4気筒2.0リッターに換えてV6 3.0リッターを搭載する点がS5の最大の特徴である。最大出力は367ps、最大トルクは550Nmで、A5のガソリン(204ps/340Nmと150ps/280Nmの2タイプ)ならびにディーゼル(204ps/400Nm)を軽々と上回る。 もともと強力なエンジンに、A5のディーゼルモデルとともにデビューしたパワフルなマイルドハイブリッドシステム「MHEV plus」が組み合わされる。MHEV plusはモーターの力により最大24psを発揮。ハイブリッドシステムの電圧だけでいえば、200V以上を用いるストロングハイブリッドを大きく下回る48V系のマイルドハイブリッドでありながら、条件によってはエンジンを切った状態でも走行できるほどの力強さを得ている。これが、ドライバビリティや燃費の改善に大きく役立つことはいうまでもないだろう。 S5で標準となるフルタイム4WDシステム「クワトロ」のトルク配分機構が、従来のトルセン式デフから電子制御式多板クラッチ方式に切り替わった点も、ベースモデルに準じた変更。つまり、これまでのメカニカルでパッシブな方式から、走行条件にあわせて前後のトルク配分を積極的に制御できるアクティブ4WDに生まれ変わったことになる。 一方、ベースモデルと大きく異なっているのが、リヤデフに「クワトロ・スポーツ・ディファレンシャルギヤ」を搭載した天田。これは、コーナリング時、アウト側の後輪により多くの駆動力を伝えることで、クルマが積極的に曲がろうとする力を生み出すもので、4WDの弱点とされる コーナリング時にアクセルペダルを強く踏み込んだときに起きるアンダーステア(思ったほど曲がってくれない現象)を軽減し、よりスポーティなハンドリングを実現するものだ。 なお、このクワトロ・スポーツ・ディファレンシャルギヤ自体は、従来型S4/S5からの流用とのこと。細かい話になるが、新型A5のクワトロは、エンジンから後輪に駆動力を伝えるプロペラシャフトという部品の前後に電子制御式クラッチを装備。後輪を駆動する必要がないときはプロペラシャフト前後のクラッチを解放することで、プロペラシャフトが無駄に空転して走向抵抗となるのを防いでいる。つまり、燃費とCO2排出量の改善に役立てているわけだが、従来型からの流用であるクワトロ・スポーツ・ディファレンシャルギアにはこの電子制御式クラッチが装備されていないため、走行中のS5は常にプロペラシャフトが回転し、走向抵抗の点では不利となる模様だ。