なぜドイツ製高級車は走りがイイのか? 新型アウディS5は“爽快感”に迫る
プレミアムブランドならではの仕立て
国際試乗会が開催されたフランス・ニース近郊のワインディングロードでは、S5セダンのステアリングを握った。 MHEV plusを得たV6エンジンは驚くほど力強い。しかも、EVのように動き出した直後から強力な加速感が得られるのは、MHEV plusの効果とみて間違いないだろう。 さらに、アイドリング回転数からレッドゾーンが始まる6000rpmオーバーまで、どの回転域でもリニアでレスポンスのいいパワーを発揮してくれる。そうした扱い易さと強力なトルクのおかげで、ワインディングロードではバツグンの爽快感を味わうことができた。 足回りのセッティングも絶妙だ。 ドライビングモードでコンフォートを選んで走り出せば、ソフトな乗り心地で従来型S4を凌ぐ快適性をもたらしてくれるうえ、ダイナミックを選べばロール(ボディの傾き)を抑えて安定感溢れるコーナリングが味わえる。 つまり、新しいS5は従来型に比べて乗り心地とハンドリングのバランスが確実に向上していたのである。 敢えてS5の弱点を挙げるなら、V6エンジンをフロントに積んだ結果、直4エンジンを積むA5よりコーナリング時のノーズの動きがやや鈍くなったことだが、ステアリング系全体の剛性を高めてカッチリとして印象を強めたハンドリングが、その弱点を多少なりとも補ってくれるはずだ。 ボディを全体的に大型化するいっぽう、従来型よりもボンネットを長くし、Aピラーの位置を後退させることで力強い走りをイメージさせるデザインに生まれ変わったS5。プレミアムブランドの“上質な走りのハイパフォーマンス・モデル”というジャンルでは、最上級に位置するモデルのひとつといっていいだろう。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)