サルーンやSUV、コンセプトカーもアリ! WRCの新規則が公開。新メーカー参入を目指しベース車両条件を緩和……予算上限も
FIAは、2027年から世界ラリー選手権(WRC)導入にされるテクニカルレギュレーションを発表し、今後の道筋を明らかにした。また、それに合わせて2025年シーズンの新ポイントシステムも公開した。 【ギャラリー】WRCラリー・ジャパン DAY4 世界モータースポーツ評議会(WMSC)は、WRCにより多くのチームや自動車メーカーの参戦を促すため、新たな見た目の“WRC27”車両が多様かつ、34万5000ユーロ(約5510万円)という予算上限に収まるように製造されることになると認めた。なおレギュレーションは10年周期で更新される。 現行Rally1車両のコストが約100万ユーロ(約1億6000万円)に達したことを受けて、コスト削減が新レギュレーションにおける重要な要素となっている。 これらのコスト削減は、財務レギュレーションではなく、部品コストの仕様によって実現するという。また、ラリー期間中の耐久性を高めるために、特定コンポーネントの技術的な設計でも節約が図られる。 車両自体のコスト削減に加え、人員削減、ロジスティクス輸送コストの削減、現地施設の利用拡大、遠隔エンジニアリングを支援するためのデータコネクティビティの向上などにより、チームの運営コストも削減される。 新Rally1車両は現行のスペースフレームシャシーをベースとしながらも、内燃機関、ハイブリッド、電動モーターなど様々なパワートレインを搭載できるように設計される。各メーカーが異なるパワートレインを選択した場合、技術を均等化するためにトルクメーターが使用されることが分かっている。 また、ほぼ全ての市販車のボディワークに新Rally1車両のセーフティセルを取り付けることが可能。つまり、2027年のWRCではハッチバックだけでなくサルーンやSUV、さらにラリー専用コンセプトカーのデザインを使用したマシンがステージを駆け抜ける可能性さえある。 motorsport.comの調べでは、2027年のマシンスピードは現行Rally1車両よりも遅くなり、2012年から2016年までのWRC最高峰クラスのマシンのペースに近くなるようだ。 この新レギュレーションは、WRCと世界ラリークロス選手権のコラボレーションを見越したモノで、メーカーやチームが並列参戦プログラムを実施するための機会を提供する。ただ、それぞれの選手権特有のニーズに対応するため異なるパワートレインが搭載される可能性もあり、レギュレーションはさらなる承認とアップデートが必要となる。 「今回承認されたレギュレーションは、FIA世界ラリー選手権の長期的な成長にとって不可欠なモノであり、コスト抑制、持続可能性、そしてラリー最高峰での競技者増加に重点を置いたエキサイティングな未来への礎を築くモノだ」 FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長はそうコメントしている。 ■2025年の新ポイントシステム FIAはまた、2024年シーズンのWRCに導入されて物議を醸したポイントシステムを2025年に変更することを決定した。 今年のポイントシステムは、その複雑さと段階的な配点によって関係者やファンの間でも話題となり、総合優勝の価値を下げていると感じる者も多い。 現在のポイントシステムは土曜日と日曜日で分割され、ドライバーは土曜日までのステージを終えた段階で、総合トップ10のドライバーは順位に応じたポイントを暫定的に獲得することができる。ただ、実際にポイントが与えられるのはラリーを完走したクルーのみだ。 これに加えて日曜日には、最終パワーステージで上位5名に与えられるボーナスポイントに加えて、日曜日のみの総合トップ7にも順位に応じてポイントが付与される。 日曜日のアクションを向上させるために考案されたこの新ポイントシステムで、エキサイトメントを生み出すという点では非常に効果的だったものの、段階的にポイントが与えられるというシステムに対してはドライバーやチームからの強い反発もあった。 そのため、2025年に向けてWRCのポイントシステムが改訂され、各ラリーの総合順位に基づき、総合トップ10のクルーに順位に応じて25-17-15-12-10-8-6-4-2-1ポイントが与えられるように。また最終パワーステージでは、トップ5のクルーに順位に応じて5-4-3-2-1の追加ポイントが与えられる。 FIAは、WRCポイントシステム変更について次のように説明した。 「改訂されたフォーマットでは、土曜日のポイントを削除することで簡素化をもたらし、ラリーウィナーが(結果的に)2位のドライバーよりも少ないポイントを獲得するという可能性を減らし、日曜日の興奮と競争力を引き続き強化していく」 「スーパーサンデーのフォーマットは重要な競技日としての役割を維持し、パワーステージは中継とファンにとって重要な要素であり続ける」
Tom Howard