「行政は万能ではない」「避難するかはあなたが判断」──住民主体の防災対策に方針転換 中央防災会議
『「自らの命は自らが守る」という意識を持ち、住民等が自らの判断で避難行動をとることが原則』──。 なぜ危険が迫っても逃げないのか 西日本豪雨の検証を 平成で最悪の死者・行方不明者232人を出す豪雨災害となった西日本豪雨(平成30年7月豪雨)を受けて避難のあり方について検討してきた政府の中央防災会議・作業部会は12日、水害・土砂災害からの避難対策の提言をまとめた報告書案を示した。 全33ページの報告書案の中には、西日本豪雨を受けて国土交通省、気象庁、農林水産省が避難対策について検討した内容や、具体的に実施すべき主な取り組みが盛り込まれているが、こうした中にあって目を引くのが「自らの命は自らが守る」「自らの判断で適切に避難行動を」などという記述だ。 これらは「はじめに」「避難に対する基本姿勢」「おわりに」といった項目の随所に盛り込まれている。作業部会の主査を務める田中淳・東京大学総合防災情報研究センター長は「大きく踏み込んだ表現」と話しており、行政主体だった日本の防災に対する考え方を大きく転換する報告書になったといえるだろう。
情報を出しても避難しなかった西日本豪雨
西日本豪雨では、早い段階から気象庁が異例の記者会見を開いたり、自治体が避難の呼びかけを実施した。また、被災した地域の多くが、事前にハザードマップなどで洪水や土砂災害のリスクが高いことが公表されていた地域だったことも明らかになっている。 にもかかわらず、人々が必ずしも避難行動をとらなかったことが、西日本豪雨によって改めて浮かび上がった大きな課題の一つだ。「ハザードマップの存在は知っていても内容を理解していない」「気象庁や行政などが出す情報の種類が多くて分かりづらい」「過去の災害でも被害はなかったから、自分のところは大丈夫という思い込み(正常性バイアス)がある」。災害後に行われた研究機関の調査などから、避難行動をとらなかった理由として、これらの原因が見えてきた。 こうした問題を解決するための具体的な取り組みとして、報告書の「避難対策への提言」の部分では、▽災害のおそれが高まった時に住民がとるべき行動を5段階に分けて、雨量に基づいた情報、河川の水位に関する情報、避難情報など多種類あってわかりづらい防災情報をこれに合わせて整理し直す案(5段階の警戒レベルの設定)▽水害・土砂災害リスクがあるすべての小・中学校で避難訓練をする体制を構築する案▽複数の災害リスクを一元的に把握できるように各種災害のリスク情報などを重ね合わせて表示できるサイトを構築する案──などが盛り込まれた。