子供の頃から母親が何でも決めていて…… 優柔不断な性格を直したい
精神科医Tomy先生が、ビジネスパーソンのさまざまな悩みに向き合う「精神科医Tomyの心のコリ解消法」。今回のテーマは「優柔不断」です。失敗が怖く、なかなか物事を決められないことに悩む男性にTomy先生がアドバイスします。 【関連画像】今日のサプリ。まずは決めることに慣れることが大切よ たいていのことは何とかなるから大丈夫 ●優柔不断な性格の自分を嫌いになりそうです 今回悩みを打ち明けてくれたのは、大手家電チェーンで販売員として働く40代の英二さん(仮名)。子供の頃から優柔不断で、何を決めるにも時間がかかると言います。母親が過保護で、幼少期から何事も自分が決める前に母親に決められていたそうです。たまに自分の意見を伝えても採用されない。英二さんは、次第に母親に意見を言わなくなりました。 そんな英二さんですが、社会人になり、意見や決断を求められることが増えました。自分で決断する機会が少なかった英二さんは、即断即決はできないものの、真面目な仕事ぶりで部内で一定の評価を得ていました。ただ、年齢を重ね、30代後半でサブリーダーになってからは、ずっと抱えてきた「優柔不断」の性格がより気になるようになってきました。 決断力がなければ、この先、昇格も危うい――。優柔不断な性格を直したいとは思うものの、「長年染みついたものなので、なかなか直せない」と英二さんは悩んでいます。 「Tomy先生、優柔不断な自分が嫌いになりそうです。どうすれば決められない性格を直せますか?」 ●時間制限を設けて「決める」練習をしてみて 「優柔不断な性格を直したい」というのが英二さんの悩みですね。私も決められないときがあるので、英二さんの気持ちはよく分かります。 物事を決められない人にとって大事なのは、とりあえず決めてしまうことです。それによって取り返しがつかないほど大事(おおごと)になることは、ほぼありません。交通ルールや法律があるように、取り返しがつかない重要なことは、既に世の中にルールが存在しています。車の運転をみんながその場の状況で選択したら、大事故になりますから。 そう考えると、自分が日常生活で抱く悩みは、さっさと決めてしまったとしても、大抵の場合、何とかなります。もしかしたら、嫌なトラブルが発生して、「違う選択をしておけばよかったな」と後悔したり、周りからそう言われたりするかもしれません。でも、その「違う選択」が本当に正しかったかどうかは、永遠に分からないことが多い。時間を戻して別の選択肢を試すことはできないので、考えること自体が不毛です。 また、決め切れないときは、メリットとデメリットが明白でない場合が多い。例えば、夜ご飯のおかずを焼き魚にしようとして、スーパーで鮭の切り身が2匹500円だった。でも、商店街の魚屋では同じサイズの魚が3匹500円だったとします。そうすると魚屋で買ったほうがお得なのは明白なので、悩まないでしょう。 でも、鮭の切り身のサイズに違いがあったらどうでしょう。2匹と3匹、迷いますよね。どちらの方がおいしいだろうか、と考えたらさらに迷うかもしれません。でもそれは、メリットとデメリットが明白でないということ。それなら、どちらを選んでもいいわけです。そういう問題は、さっさと決めてしまって大丈夫です。 また、2つの選択肢があった場合、AとBのどちらも「違う魅力があるから悩む」というケースもあると思います。そんなときも、どちらを選んでもほとんど後悔はしないでしょう。こんなとき、どちらも魅力的で決められないからという理由で、AとBの中間のような、新しいCという選択をする人がいます。 例えば、ランチでとんかつ定食と生姜焼き定食で迷って、どちらも少し入っている日替わりA定食を選ぶような感じです。 その場合、結局どちらの魅力も中途半端になり、「もっとこっちが食べたかった」と後悔してしまうことがある。迷うと、どうしてもC、D、E……と選択肢を増やして目移りしてしまうのです。そうするとまた考える時間が長くなってしまう。こうした行動は、選択しないための言い訳をしているだけだったりします。選択肢はむやみ増やさない方が賢明です。 こうした点に注意をしながら、自分でタイムリミットを決めて、早く決めていく練習をしてみてください。最初は食べるものなど、日常のささいな決断から始めてみましょう。素早い決断を繰り返しているうちに、優柔不断は少しずつ改善されていくでしょう。 私はかつて、メンタルクリニックの開業や実家の手伝いなど、やるべきことが重なって、とてつもなく忙しい時期がありました。決めなければ物事が進まないので、悩んでいる時間もなく、とにかく決めざるを得ませんでした。そうやって1つ1つ、素早く決めていく経験をしたおかげで、かなり決断力が高まりました。