【FP解説】「103万円」実は高い壁じゃない? 本当に手取りが減るのは「●●万円」 国民民主党の”アキレス腱”が抱える課題
衆議院選挙での国民民主党の躍進で「年収103万円の壁」に注目が集まっています。所得税がかかり始める課税の最低ラインを年収178万円に引き上げることで手取りを増やそうという政策です。
先週には「年収106万円の壁」を巡っても大きな動きがありました。パート労働者の年収が106万円を超えると厚生年金や健康保険に加入する義務が発生し手取りが減ってしまうため、働き控えの原因とされています。厚労省はこの壁を見直し、年収に関係なく労働時間が週に20時間以上であれば加入する方向で調整しています。
「年収の壁」は何種類もある? ファイナンシャルプランナーが解説
ひとくちに「年収の壁」といっても、その内容はさまざまで、「税金に関する壁」と「社会保険料に関する壁」に分けることができます。どう違うのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの前野彩さんとひも解きます。
「103万円の壁」は「税金に関する壁」です。年収が103万円を超えると、住民税と所得税が課税されます。 年収104万円の場合では、手取りが102万3360円となります。基本的に課税はなだらかに行われるので、103万円を超えたとたんに、手取りが大きく減るということではありません。
ただし、家族のうち子どもの年収が103万円を超えると、子どもが扶養から外れてしまうので、親の手取りに影響が出ることになります。 夫の年収が500万円、妻が専業主婦で、大学生の子どもがアルバイトをしているという家庭を想定します。子どものアルバイト収入が103万円以下の場合は扶養に入っているので、特定扶養控除により、夫の手取りは398万7100円となります。 ところが、子供の収入が104万円となると、扶養から外れてしまうため所得税や住民税がより多くかかることになり、手取りは390万9900円となります。夫の手取りには年間7万7200円の差が生じることになります。
夫婦間では、異なる扶養の仕組みが適用されます。さきほどのケースでは、妻が「配偶者特別控除」の対象となるので、年収150万円まで働いても夫の税負担は変わりません。 国民民主党は、「手取りを増やす」という公約を掲げ、衆議院選挙で議席を7議席から28議席へ4倍に増やしました。この「103万円の壁」を178万円に引き上げ、所得税が発生する最低ラインを上げることにより、現役世代の税負担を減らそうというものです。