「バズーカ緩和」は消費税引き上げへの布石なのか?
消費や賃金への影響にはタイムラグ
そんな中での追加緩和による資産市場の好影響は、消費税増税を決断する絶好の材料となるでしょうか。 現在、政府は消費税率を予定通り10%へ引き上げるかどうかの是非を有識者から聞く「集中点検会合」を開催中です。これは11月4日に初会合が行われ、断続的に13日、14日、17日、18日と5回にわたって行われ、計45名お有識者・専門家が意見を述べることになっています。消費税増税に関して、賛成・反対の意見はそれぞれですが、これらの意見や経済指標などを踏まえた上で、安倍晋三総理が12月上旬に「総合的に勘案して判断」するとされています。 「安倍総理が判断材料とする時に参考となる経済指標のほとんどが、悪い数値で出てくると思います。日銀が追加緩和を決断したのも、経済状況が悪いからでした。言い換えれば、日銀は消費税増税による経済の悪化を認めたといえるでしょう。そして金融政策はまず金融資産市場に影響を与え、消費や賃金への影響にはタイムラグがあります。追加緩和によって今月中に多くの経済指標が好転するということはありえないし、ありえたとしても12月上旬に出される経済指標は10月まで。追加緩和の影響がない経済状況の数値を見て判断するとなるわけです。そうれあれば、『総合的に勘案して景気が良くないから延期する』という判断は妥当でしょう」
追加緩和で株価上昇 増税は問題なし?
一方、別の見方も考えられます。 「追加緩和の手当をして、株価も上がったし、景気悪化は一段落したので増税は問題なし。今こそ財政再建のために増税だという判断もありえるでしょう。しかし、今回の追加緩和は、現在の経済の落ち込みに対して行われた処置だということに留意すべきです。たとえ来年末に再増税される時に経済が再び好循環に入っていても、再増税による経済の落ち込みを防ぐものではないということです。むしろ再増税が行われれば今回の追加緩和の好影響もすべて台なしにする可能性があるでしょう」 少なくとも今年4月の増税による「経済への影響が軽微」だとはいえないのが、現在の経済状況だといえます。その点で昨年の集中点検会合で経済への影響を過小評価したにもかかわらず、今回も参加し、増税を訴える有識者・専門家は過去の発言を振り返って自己評価を改めてから発言してほしいものです。