「アジア投資銀行」創設に57か国 今後の焦点は?
中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に創設メンバーとして57か国が参加することになりました。イギリスやドイツ、フランスなどの欧州主要国をはじめ、韓国やインドネシアやフィリピンなど東南アジア諸国、サウジアラビアやイラン、イスラエルなど中東諸国にブラジルや南アフリカなど、世界各地域の国々が名を連ねています。なぜ参加国がこれほどまで広がりを見せたのでしょうか。設立へ向けて何が今後の焦点となるのでしょうか。 【図】「アジアインフラ投資銀行」創設メンバー57か国
現状の国際開発金融への不満
中国は、2013年10月にアジアインフラ投資銀行(以下AIIB)構想を打ち上げてから短い期間に膨大な設立準備作業をこなし、2015年末に正式に発足するところまでこぎつけました。設立準備が超高速であることは高速鉄道網や石油のパイプラインなどの建設の場合もそうでしたが、AIIBの場合は、単に中国内で建設するのではなく、多数の国を巻き込んで国際的なプロジェクトにしようとしています。しかも、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行など主要な国際開発金融機関に挑戦的な姿勢で設立準備が行われているため、AIIBは米国中心の世界の金融秩序を中国が打ち破り、代わって中国が主導する新秩序を樹立する試みであるととらえる見方もあるようです。 AIIB構想が各国に強くアピールした理由は大きく言って2つあると思います。 1つは、アジアのインフラ投資需要が巨大であり、アジア開発銀行(ADB)の試算によると、今後10年間で8兆ドル(約960兆円)の投資が見込まれていることです。 もう1つは、アジア開発銀行など既存の国際開発金融機関は業務ポリシー、マネジメント両面で改革が必要だという不満があることです。先進国首脳会議(G7サミット)でも「国際開発機関の機構改革」が主要な議題の一つとして取り上げられています。 つまり、中国は既存の国際開発金融秩序に対する各国の不満を巧みに利用し、その欠陥を是正するという大義を掲げながら、AIIBが設立されれば大型プロジェクトが続々と作られることになるという印象を作り出し、アジアの諸国のみならず欧州の名だたる強者である英独仏伊などもAIIBの設立準備に吸い寄せたのです。