【初詣、どこ行く?】巳年に参拝したい! 財運と健康運をもたらす蛇の神社5選
渋谷 申博
古くから日本では、蛇は水の神や弁才天(弁財天)の化身とされてきた。巳(み)年にちなみ、蛇への信仰をひもとくと共に、蛇を祀(まつ)る神社を紹介する。
生命力の象徴、水の守り神、財運の御神徳
蛇を神としてあがめたり、神の使いとして大切にしたりする習俗は世界各地にみられる。多くは冬眠や脱皮といった蛇の生態に、不老長寿や再生の願いを重ねた信仰である。 日本では縄文土器に蛇の紋様が盛んに取り入れられており、当時すでになんらかの信仰対象であったと分かっている。有史以降は、湿地に生息することから水、特に泉の神またはその使いとされた。
奈良時代には蛇=水神の信仰は、仏教の守護神である弁才天の信仰と混じり合った。元々はインドで川と水の神であったので、共通するところが多かったのだ。さらに中世以後、穀物や福徳をもたらす蛇神の宇賀神(うがじん)と同一視され、財宝神として弁財天とも表記されるようになった。 神聖な蛇を祀る神社は日本各地にある。参拝してご縁を深めれば、生活に潤いをもたらしてくれるだろう。
太古の蛇信仰を伝える「大神神社」(奈良県桜井市)
太古に王朝が置かれた奈良県中部の桜井には、最古の書『古事記』『日本書紀』に神が住むと書かれた三輪山がそびえる。この山を御神体とする大神(おおみわ)神社は現存最古の神社といわれ、仏教伝来以前の自然崇拝の姿を今に伝える。 祭神の大物主大神(おおものぬしのおおかみ)は、美しく小さな蛇の姿をしているとの伝承もある。産業・医薬・酒造の神として知られ、全国から参拝者が絶えない。 拝殿前にそびえる巨木は「巳の神杉(みのかみすぎ)」と呼ばれ、祭神の化身である蛇「巳(み)さん」が住むと信じられてきた。参拝者は巳さんのご加護にあずかろうと好物である卵をお供えする。 桜井には他にも由緒ある社寺や古代遺跡が多く、世界文化遺産への登録も目指している。まさしく、国の始まりの時代に思いをはせられる場所だ。
伝説の刀鍛冶がささげた巳像を祀る「金蛇水神社」(宮城県岩沼市)
東北の中心都市・仙台から電車とタクシーで30分ほど、緑豊かな杜(もり)に鎮座する金蛇水(かなへびすい)神社。その創建伝承は一風変わっている。 10世紀の平安京で希代の刀匠として知られた三条宗近(さんじょうむねちか)は、一条天皇の刀剣作りを拝命する。作刀に欠かせない良質な水を求めて、水神を祀る清流のほとりに工房を構えた。ところが、カエルの鳴き声で精神が統一できず、良い刀ができない。蛇の像を作って田に置いたところ、カエルはぴたっと鳴くのを止めた。水神の加護で名刀を鍛え上げた宗近は、感謝の印に金(かね=鉄)の蛇を奉納した。 水神の宮は宗近の巳像を御神体とし、社名を金蛇水神社に改めたという。以来1000年の間、財力・生命力・生業守護の神として信奉されてきた。境内は蛇紋が入った石が並んで神秘的だ。 2020年にリニューアルした参道は現代的な装い。長い木造屋根をしつらえ、休憩所やカフェテラス、ギャラリーを一体化したモダンな建物となった。白蛇をかたどったパンやアクセサリーなど蛇神様にまつわるグルメやグッズも多彩で、参拝の楽しみが増えた。