9歳で単身渡英。挑戦し続けるソレクティブ代表 岩井エリカが、フリーランスの価値にこだわる理由
フリーランスの生き方まで支えるプラットフォーム
──ではソレクティブの事業内容についてお聞かせください。 私たちが提供しているサービス・Sollectiveは「フリーランスの成功を支えるAll-in-One Platform」。優れたスキルを持つフリーランスの方々、そしてそのような人材を必要としている企業様をサポートしています。 企業様に対しては「事業課題をプロフェッショナル人材の力で解決していきましょう」という形で、ソレクティブ独自の審査を通過したプロフリーランスの方々をソリューションとして提案。 フリーランスの方に対しては、フリーで活躍していくために必要なエコシステムを提供しています。これには、スポットワークではなくプロジェクト型の案件の提案、そしてバックオフィス業務を一元管理する「FreelanceOS®」というビジネスツールの提供が含まれます。 フリーランスにとって仕事は生き方の一部であり、案件マッチングだけではサポートとして不十分です。どんなに優秀な人でも仕事をできる時間は限られていますし、バックオフィス業務に時間を取られて、クライアントワークに集中できないのはもったいない。 そこで、業務委託契約書の作成、顧客情報とプロジェクトの進捗管理、請求書の発行といった機能を備えた「FreelanceOS®」を自社開発しました。 ──フリーランス人材の審査内容についても教えていただけますか? 領域に関係なく大切にしているのは、結果や成果を重視するプロフェッショナリズムをお持ちかどうかです。 審査を行なう専門家は、弊社のコミュニティに属しているフリーランスの方々。「フリーランスの価値を証明する」というミッションを掲げるうえで、フリーランス同士でプロとしての資質を判断していくことが重要だと考えたため、「コミュニティ自身が次の世代を見極める」という形を大切にしています。 審査については、各領域の専門家が担当。マーケティングならマーケティングの専門家が、デザイナーならデザイン領域の専門家が、という形でそれぞれの分野のプロが判断します。 さらに、得意とされている業務領域の専門性に加えて、人間性の部分で、コミュニケーションの取り方を含めて社会人としてふさわしい心得をお持ちか、約束事を守れるか、機密情報の取り扱いやビジネスツールに対応できるか、などを総合的に判断して、クライアントにバリューを提供できるかを確認しています。 ──ビジネスモデルについてお聞きしたいのですが、フリーランスの方からは仲介手数料を取られていないそうですね? はい、マッチングにおいては、手数料を企業様からいただいています。私たちは「フリーランスファースト」の理念のもと、フリーランスの報酬から手数料を差し引くいわゆる「中抜き」を行ないません。 また基本的にフリーランスの方向けのツール『FreelanceOS®︎』はフリーミアムモデル。プラットフォームに登録すれば、どなたでも契約書の作成や請求書の発行など一定数まで無料でご利用いただけます。 なお審査に通過したSollective 認定フリーランスはすべての機能を無制限で利用できる仕組みです。 ──事業も5期目に入られたということですが、特に大変だった局面と、そこをどのように乗り越えたかについてお聞かせいただけますか。 先ほどもお話ししましたが、起業家は楽観的でいないと続けられないと思っているので、大変だったことは、なるべく「気を失う」ようなイメージで忘れるようにしていますね(笑)。 そのうえで一番つらかったのは、言葉の壁。海外での生活が長かったため、慣れない日本語でビジネスをするのは、大変なことばかりでした。起業した5年前は日常会話もままならなかったので、資金調達やプレゼンテーションの場ですごく悔しい思いをしたものです。 このもどかしさを乗り越えるために努力したのが、周囲のビジネスパーソンの言葉遣いを観察し、吸収すること。メールの書き出しや結びなど、日本独自のビジネスマナーを子供になったつもりでまねしながら身につけていったのです。 もう1つ大変だったのは、起業した当時、日本にまったく知り合いがいなかったこと。しかもコロナ禍で、ネットワーキングもできない状態でした。ひたすら、紹介を頼りにつながりを広げ続け、今に至ります。 ──リーダーシップやチームビルディングにおいて、特に大切にしていることを教えてください。 私はカッコいいリーダー像とはほど遠い人間で、むしろリーダーというより、みんなと現場で一緒に働くメンバーの一人だと、自分を認識しています。 それに、リーダーは現場の感覚を持っていないと、会社の優先順位を適切に判断できないのではないでしょうか? 私自身もマネジメントだけでなく、自分の手で仕事をすることを大切にしていて、これからもそのスタイルを続けるつもりです。 チームビルディングにおいては、採用基準を見直したことがターニングポイントになりました。以前はスキルセットにフォーカスしていたのですが、うまくいかない部分があり、「この人と働くとワクワクするか」という基準を設けたのです。 スタートアップは大変なこともあるので、仕事を楽しいと感じ、プライドを持って取り組んでくれる人と一緒にいたい。この部分を重視することで、組織づくりがうまくいくようになりましたね。 ──ソレクティブを通じて実現したいゴールや、目標についてお聞かせください。 私たちのミッションは「フリーランスの価値を証明する」こと。 お話ししたとおり、日本に戻ってきたあと、私自身もフリーランスになったのですが、周囲からは「大丈夫なのか?」「今までのキャリアを捨てるのか?」と言われました。 アメリカではフリーランスの社会的評価も確立されていて、独立するということはそれだけのスキルを持っているというプロフェッショナルなイメージが強いのに対し、日本ではフリーターのようなイメージで捉えられがちです。そういった価値観を変えていきたいという思いから、このミッションを掲げています。 実際に日本では、80%以上の企業がフリーランス人材を活用したことがありません。フリーランスが組織づくりの選択肢として広がれば、人的資本経営の考え方に基づいて、「このポジションは固定費(正社員)、このポジションは変動費(フリーランス)として扱う」といったように、ビジネスを推進し、結果を出すための仕組み化も実現しやすくなるはずです。 加えて、フリーランス個人の暮らしについても変えていきたい。私自身、フリーランス時代にクレジットカードの契約や銀行口座の開設を断られた経験があるのです。収入があるのに、フリーランスだからという理由で審査が通らないのはおかしい。 私はソレクティブをフリーランスのライフスタイルブランドとして確立させ、フリーランスも正社員も対等な社会を目指したい。そこを変えていくことが私たちの挑むべき課題だと捉えています。