【2024年ベストバイ】繊研新聞 小笠原拓郎が今年買って良かったモノ
今年のお買い物を振り返る「2024年ベストバイ」。16人目は本企画の常連で、12年連続の出演となった繊研新聞社 編集委員の小笠原拓郎さん。日本を代表するファッションジャーナリストである小笠原さんが今年買って良かったモノとは? 【写真】繊研新聞 小笠原拓郎が購入したコム デ ギャルソンのクラッシュベルベットジャケット
セッチュウのGeisha コートとデニムパンツ
FASHIONSNAP(以下、F):ミラノを拠点にする日本人デザイナー桑田悟史さんが手掛けるブランド「セッチュウ(SETCHU)」のGeisha コートとデニムパンツ。いずれも2024年秋冬シーズンのものですね。 小笠原拓郎(以下、小笠原):悟史くんは昨年LVMHプライズを取りましたけど、受賞する前、フリーランスセールスのノリ(平田典之)に「見てほしいブランドがある」と言われていたのがセッチュウだったんですよ。二つ返事で「いいよ」と伝えて、約束した直後にLVMHプライズを取っちゃって。私が取り上げなくても、もう世の中に広まったじゃないかと。 F:「ダブレット(doublet)」の井野さん(井野将之)以来となる日本人受賞者ですからね。それで最初にセッチュウを見た時はどう感じたんですか? 小笠原:最初は2024年春夏を見たのかな。「和洋折衷」というコンセプトはすごく面白いけれど、その時はもうちょっとプロダクトのクオリティが上がるといいなぁと思っていました。それでLVMHプライズを取って資金的に余裕ができたのもあったんでしょう。2024年秋冬で一気にプロダクトのクオリティが上がり、とても良くなっていた。ちょっとびっくりして彼とはいろいろと話したんだけど、やっぱりこういったいいものを作っている若いデザイナーの服をちゃんと買って、着ていくことがすごく大事だよなっていうのは今年特に感じたことで。 F:ではこの2アイテムは結構着ている? 小笠原:もうめちゃめちゃ着ています。このGeisha コートの素材はシルクウールで、縦にシルクが入っているからシャンタンのような風合いなのがわかると思います。加えて、縛って着ることもできるし、ほどいて垂らして着ることもできたりといくつも着方があるんです。サイドにも切れ込みがあってケープのように羽織ることもできますし、あと意外と気付きにくいんですが、前身頃にフックがあって、引っ掛けると前合わせのデザインが変わるようになっています。近頃は秋でも暑い日が続くので、デザインで暑さを調整できるのも魅力。さらに、折り目に沿って畳めるのでスーツケースにも入れられ旅行や出張にも持っていける。「芸者のように抜いて着る」というコンセプトはありつつ、悟史くんが旅好きだからこそ生まれたデザインでもあるのでしょう。 F:ミラノでお会いした時、桑田さんは釣りが好きとも言っていました。 小笠原:釣りが大好きみたい。釣り道具と会社にしかお金を投資していないって言ってましたよ(笑)。 F:Instagramのストーリーズでよく魚の写真を上げていますしね(笑)。こちらのデニムパンツはとても軽いですが、コットン100%ですか? 小笠原:そう思うかもしれませんが、実はこれには和紙が入っているんですよ。履いたらより軽さを実感できます。あと悟史くんも言っていましたが、紙は熱が伝わりにくく断熱性があるため温かいんですよ。 F:軽さを追求して生地が薄くなることで、防寒性がなくなってしまうところを和紙でカバーしたわけですね。 小笠原:そう。オンスを軽くすることにとても苦労したと言っていましたね。 F:よく見ると、ウエスト部分は紐なんですね。 小笠原:そうそう。まぁ、私はあんまり紐は使わないですけどね。このパンツは裾丈が短めの作りなんですが、1つ上のサイズをあえて買って、普段はそれをわざとロールアップして履いています。この極太のミミを見せたいなと。 F:確かにこのミミはインパクトありますね。合わせるシューズはやはり小笠原さんが普段よく履かれている「ヴァンズ(VANS)」ですか? 小笠原:ヴァンズか、あと「コンバース(CONVERSE)」の白の「オールスター(ALL STAR)」を合わせたり。 F:年が明けて2025年1月、セッチュウは「第107回ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo)」の招待枠で初のファッションショーを開催します。 小笠原:正直、ショー映えする服かといえば、そうじゃないところもあると思いますが、夏に会った時に「ちょっと考えていることがあるんで」と彼が言っていたから期待はしています。その時に、ピッティで料理を作ってくれとも言われたんですけどね。 F:え、小笠原さんがですか(笑)? 小笠原:そう(笑)。ショーが終わった後に、限られた招待客を招いた食事会を開こうとしているみたいで、そこで和洋折衷の料理を作ってくれと。「いや、そんな何十人もの料理作れないよ」という話をして。