ビュッフェは持続可能か?――葛藤するホテルの試行錯誤とサービスの未来【#コロナとどう暮らす】
3密回避とエンタメ性を両立したワゴンスタイル
1994 年のオープン以来、行列のできるビュッフェとして人気を博してきた品川プリンスホテルの「リュクス ダイニング ハプナ」も7月15日、約4カ月ぶりにディナータイムでの営業を再開した。現在は席数を403席から270席に減らし、天井の高い空間を広々と使って客席の間隔を広く設定している。
「連日、満席のご予約をいただいております」 同レストランのスーパーバイザーを務める大澤洋三さんは、その要因をこう説明する。 「これまでの『ハプナ』のファンが少なからず来てくださった。再開を発表した当日にホテルのホームページのアクセスが急増し、再開を待ちわびていた方がとても多かったのだと実感しました」 注目は、オープンキッチンで仕上げた料理をスタッフが「ワゴンサービス」でゲストの席まで提供して回る新しいスタイル。香港の飲茶スタイルに着想を得た。ゲストは席を立つことなく食べ放題を楽しめるので、料理前の行列も回避できる。 「コロナを心配していたけど、実際に来てみると安心できた」「エンタメ性豊かで楽しめた」。ゲストの反応を知るべく各テーブルにアンケートを配布したところ、こんな回答があった。「お目当てのワゴンを座席で待つのに不便を感じる」といった今後の改善点も見つかった。ゲストの反応を見ながら改良していく予定だという。
「食材にこだわってメニューを厳選し、一品ずつの料理の質をかなり上げています」 そう明かすのは、同ホテルのレストラン調理のチーフマネージャー・小川守哉さん。食材や味などにひと手間加え、質をグレードアップ。営業再開記念特別メニューとしてスペシャリテも複数用意した。料金は以前より300円ほど値上げしている。
「ワゴンサービスになり、温かいものはさらに温かく。冷たいものはより冷たいままお届けできます。もはや従来の“ビュッフェ”ではなく、“ダイニング”レベルの料理クオリティーです。私たちホテルスタッフも、ビュッフェという名称を使っていないんですよ」(チーフマネージャー・小川さん) 「もし感染者が出てしまったら」と問うと、前出のスーパーバイザー・大澤さんはこう答えた。 「出さないために、ソーシャルディスタンスの確保のほか、マスクの装着、空気清浄機と飛沫防止スクリーンの設置など全9項目からなる新たな衛生・消毒基準『Prince Safety Commitment』を策定し、スタッフ一人ひとりが意識改革して、しっかりと順守しています」