ビュッフェは持続可能か?――葛藤するホテルの試行錯誤とサービスの未来【#コロナとどう暮らす】
実は星野リゾートグループのビュッフェ中止は5月1日と、ホテル業界のなかでは遅いほうだった。北嶋さんはこう振り返る。 「開業以来、ずっとビュッフェを営業してきたこともあり、中止することへの戸惑いがありました」 ビュッフェに代わるよいものを出さなければならないと意気込んだ北嶋さんたちだったが、ひとたびセットメニューに変更すると、想像以上に顧客から落胆の声が寄せられた。 「ニーズがあるならば、諦めるのではなく、どう工夫して応えられるか。それがサービス業としての本分だろうという議論になりました」 慎重論も出たが、顧客の反応などを見ながら「再びやめる」という選択肢も残した上で、チャレンジすることに。顧客からは、再開を喜ぶ反響が大半を占めた。 ビュッフェ再開は、経営面に好影響を与えているのだろうか。北嶋さんは言う。 「ホテル全体の稼働率は、5月時点で前年比の7割減近くまで落ち込んでいましたが、新ノーマルビュッフェのスタート後、6月後半から徐々に戻り始めています」 7月の稼働率は昨年の数字に迫っているという。 「一概にビュッフェの影響だけとは言い切れないものの、グループ内でいち早くビュッフェを再開したリゾナーレ熱海は、稼働率の回復率も若干早いという印象があります」
運営費がかさみ、採算が取れなくなれば、新ビュッフェの継続はできない。今回「新ノーマルビュッフェ」で同ホテルが施工した専用コーティングは、一度塗布すれば3年間有効であるため、ランニングコストはコロナ禍前と大差ないという。ゲストからの反響、顧客獲得数の伸びを鑑みると「十分見合う投資だった」というのが社内の評価だ。 「新型コロナの収束にはワクチンや有効な治療薬の登場を待たねばならず、年単位の長期戦も予想されます。だからこそ、持続可能な形で生き延びることが重要です。国が『Go To トラベル』キャンペーンで観光業にフィーチャーしてくれるのはとてもありがたいですが、“一点集中、一極集中”で終わるものではなく、長い期間利用でき、需要も利用地域も分散できるものになれば」