【詳細データテスト】アストン・マーティン・ヴァンテージ 速さと快適性を高次元で両立 魅力的な改良
快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆
ヴァンテージは、一日中乗っていても苦ではないクルマなのがうれしい。アストン・マーティンのエントリーモデルがスポーティさのレベルアップを図ったとはいえ、それでもこれはラグジュアリーなフロントエンジンGTなので、長距離走行でのマナーは必要だ。それが足りなければ、かなりのマイナス評価となっただろう。 まず、運転関連のエルゴノミクスが優れている。背の高いドライバーでも、ショートアーム・ロングレッグのトラディッショナルなポジションを取ることが可能だ。シート自体の形状もよく、サポート部がしっかり張り出していながら、それほど邪魔にならない。 視認性は、この手のクルマとしては良好だが、はじめて乗るとやや気圧されるところはある。スカットルが高く、ボンネットが長く、四輪の位置が把握しづらい。ただし、すぐ慣れてしまう程度だ。 乗り心地は思いのほか良好。アストンによれば、ダンパーがプライマリーライドもセカンダリーライドもうまく処理するというが、それは実感できた。もっともソフトなスポーツと、もっとも過激なトラックとのパラメーターにはかなりの開きがあるものの、どちらを選んでもふらふらしたり、骨まで響くほど不快に硬かったりして、このクルマに合わないと思わされることは決してない。ほぼいつでも、上々のはたらきを見せてくれる。おみごとだ。 静粛性は興味深い。113km/hでは73dBAで、従来モデルと同じ。かなりうるさかったポルシェ911ターボSの74dBAとも大差ない、とくに静かではない数字だが、ヴァンテージのノイズは乗員を疲れさせるような性質ではない。テスト中には1日で600km以上走ることもあったが、走り終えてもかなりスッキリした気分でいられた。
購入と維持 ★★★★★★★★☆☆
新型ヴァンテージには、生産台数の少ない大排気量GTに一般的な注意事項がすべて当てはまる。16万5000ポンド(約3168万円)という本体価格は安くないし、先代は6年前の登場とはいえ12万900ポンド(約2321万円)だったことも見落とせない。しかも、エンジンやギアボックス、サスペンションといった主なメカニズムは基本的にキャリーオーバーなのだ。 同時に、このクラスは急騰しており、ヴァンテージより速いがスター性では劣るポルシェ911ターボSは18万6916ポンド(約3589万円)、フェラーリ・ローマは18万5975ポンド(約3571万円)となっている。それらを考えれば、ヴァンテージの価格はリーズナブルで、AMG GT 63よりちょっと高いだけだ。ただし、ライバルたちは形だけでも後席が備わる。 残価については、適切に使っていれば3年後で新車価格の半分程度と予測される。それほどひどいパーセンテージではないが、金額を考えるとなかなか手痛い損失だ。 全開にしたときの燃費の悪さもなかなかのもの。73Lと大容量の燃料タンクにより、高速道路でとくにトラブルがなければ800km程度の航続距離も望めるが、テストコースでは2.3km/Lだったことからもわかるように、ブーストを効かせまくるとすぐにガス欠だ。 B級道路では5.3km/L程度だろう。これは批判より注目に値する数字だ。なにしろ、ベーシックな仕様でも700ps近いエンジンで、320km/hに達するクルマなのだから。