地下鉄サリン事件から20年 テロ組織へ突き進んだオウム真理教
なぜエリートが集まったのか
信徒の中には、医師、科学者など、高学歴の者が多く含まれていました。一般の職業に就いていたら、さぞ立派な仕事ができただろうと残念でなりません。では、なぜ優秀な彼らがこのような危険なカルト集団に入信し、テロリストと呼ばれるような愚行に走ったのでしょうか? 真相はいまでも謎ですが、オウムの手法は、現在話題になっているイスラム過激派組織「イスラム国」と同じように思えます。違うのは、オウムの時代はインターネットやソーシャル・メディアが今ほど発達しておらず、口コミや書籍に頼ったということでしょうか。まず、興味を持たせ、組織に引っ張り込む。そして、抜けられないように縛り付け、最高指導者(尊師)への絶対服従(帰依)を誓わせ、洗脳(マインドコントロール)していく。オウムも「イスラム国」も、一度入ってしまったら、脱退したくとも脱退できない組織です。無理押しすれば命を奪われるだけでしょう。したがって、最初に興味を持たせることが何よりも重視されていたと思われます。人生に張りがなく、生きる目的も見えない状態だと、現実離れした何だか面白そうなものに魅かれていくということはよくあります。 「イスラム国」でも、最初は魅力に感じても、あまりの残虐さに組織を抜け出したいと思っているメンバーも沢山いるはずです。米国を始めとする有志連合の空爆で、既に8500人のメンバーが殺害されたとの米国の発表もありました。 オウムの結末を見ると、「イスラム国」も同じような運命を辿るように思えてなりません。当世若者気質は、洋の東西を問わないのかもしれません。
--------------------------------------------------- ■安部川元伸(あべかわ・もとのぶ) 神奈川県出身。75年上智大学卒業後、76年に公安調査庁に入庁。本庁勤務時代は、主に国際渉外業務と国際テロを担当し、9.11米国同時多発テロ、北海道洞爺湖サミットの情報収集・分析業務で陣頭指揮を執った。07年から国際調査企画官、公安調査管理官、調査第二部第二課長、東北公安調査局長を歴任し、13年3月定年退職。著書 「国際テロリズム101問」(立花書房)、同改訂、同第二版