憂鬱な冬を元気に過ごす秘訣は「逆らわずに楽しむこと」、どうやって? 専門家に聞いた
自然に合わせて生きるための古代の知恵
人類は昔から季節の変化に逆らう生活をしてきたわけではない。多くの古代文化や先住民コミュニティでは、生活に自然のサイクルを取り入れてきた。 古代ペルシャでは、一年で一番長い夜を祝うヤルダー祭が、詩の朗読、スイカやザクロ、闇に打ち勝つ光の象徴としてのロウソクなどを用いて行われていた。ケルト人も、冬至を内省と新生、そして自然のサイクルとのつながりの日と考え、火のまわりに集まって祝っていた。 先住民出身の作家で、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の環境歴史学者でもあるロザリン・ラピエル氏は、北米の先住民コミュニティも、昔から季節の変わり目に儀式を行ってきたと言う。 「人々は、自然のサイクルをもとに計画を立て、生活していたのです」 米モンタナ州のブラックフット族およびレッドリバー・メティスのメンバーとして登録しているラピエル氏によると、季節の変わり目は神々が昼夜の役割を交換する境目となる時期を表している。 スカンジナビア北部のサーミ人にも似たようなところがあり、冬の間の微妙な変化に合わせて、冬を「秋冬」「冬」「春冬」の3つに分類しているとリーボウィッツ氏は説明する。このように季節の変わり目を注意深く観察することは、マインドフルネスの実践にもつながる。つまり、環境とのつながりを深めることで、不安を軽くして気分を改善できるのだ。
冬とともに生きるには
冬には薄暗いイメージがつきものだが、否定的に考える必要はない。考え方を転換すれば、冬の過ごし方を大きく変えることができる。 「考え方を変えれば、まるで魔法のような効果が得られます」。冬の過ごし方についての著書で、冬を迎える考え方を変える方法を説明しているリーボウィッツ氏はそう話す。「ただ、なぜこの方法でよい結果が生まれるのかは、明確に説明できます」 米スタンフォード大学の心理学教授で、同大学のマインド・アンド・ボディ・ラボの責任者を務めるアリア・クラム氏によると、私たちのマインドセット(世界の認識のしかたを決める一連の信条)が私たちの関心に影響を与え、最終的に行動にも影響する。そのため、冬の不便さばかりを見るなら、冬を否定的にしか見ることができなくなる。 前向きに考えるためにリーボウィッツ氏が勧めているのが、「テンプテーション・バンドリング」と呼ばれる手法だ。これは、嫌いなことと楽しいことを組み合わせる方法で、たとえば仕事の後に暗い中を運転して帰るときに憂鬱な気分になるなら、夕食時にキャンドルを灯したり、温かいお風呂に入ったりするなど、気分が明るくなる予定を立てよう。 明るい昼の時間が減ったことの埋め合わせとして、冬至のお祝いをするのもいいだろう。冬のお祝いを計画すれば、注意力が鍛えられるうえ、季節の変化を私たちに襲い掛かるものではなく私たちが祝うものとして、主体性をもってとらえられるようになる。 居場所の冬じたくも、形から入るという重要な戦略だ。夏の服をクローゼットにしまい(冬が厳しくない場所でもだ)、きれいな照明を準備すれば、冬は心地よいものだというポジティブな合図を送ることができる。 「浮かれているように見えるかもしれませんが、意図的にそうすることで、実際に闇を歓迎し、祝えるようになるのです」とリーボウィッツ氏は話す。 何よりも重要なのは、寒くても外で過ごす時間を持つことだ。その点で専門家の意見は一致している。 「国立公園に行く必要はありません。自然はどこでも感じられます。とにかく外に出ればいいのです」とラピエル氏は話す。 景色や植物、樹木の変化に気づけば、自然界のリズムを感じることができる。リーボウィッツ氏は、見つけたものの写真を撮るよう勧めている。マインドフルネスにつながるだけでなく、ポジティブな体験を友人と共有することもできる。 リーボウィッツ氏は、これだけで長い冬を乗り切れるわけではないものの、「冬を過ごしているときの気分が20%は改善されるでしょう」と言う。 季節に合わせるのは、自分への思いやりでもある。自分の体や心が季節に合わせて上下することを認識すれば、年末年始のあわただしい時間の中でも、自分により優しくなれる。 「季節のサイクルと同じように、一休みする時間があってもいいのです」とバーナム氏は言う。「でも、やがて暖かくなり、気持ちも変わるでしょう。活力のレベルも自然に変わります」 必要なのは、注意してその合図を探すことだけだ。
文=Lynda Lin Grigsby/訳=鈴木和博