「売れないタワマンとEV」を抱えて崖っぷち…経済オンチの習近平主席が「14年ぶりの政策転換」を発表した意味
■民間企業の自由よりも社会統制を優先している 中国政府の産業政策などで、国内の工作機械メーカーの製造技術が高まっている可能性はある。ただ、先端半導体などの歩留まり向上の遅れなど、今のところ、中国の製造技術は十分ではないとみられる。 人工知能の実用化などを目指す中国にとって、依然としてわが国の技術力は必要だろう。わが国の中国向け工作機械受注の伸び悩みは、中国企業経営者のマインド悪化を示唆する。過剰生産能力問題、デフレ懸念の高まり、米国の関税や対中強硬策への不安もあり、投資よりコストカットを優先する企業は増加傾向とみられる。そうした状況は社会心理を悪化させ、不動産価格の下落もあり個人消費の回復が遅れている。 中国経済の本格的な回復には、需要不足の克服が欠かせない。そのためには、個人や企業経営者の自由な発想が重要だ。しかし、中国政府には、民間企業の自由な発想を促す意図はあまり見られない。むしろ、社会統制への意図が強いようだ。 そうした状況を考えると、2025年の年初以降も、景気の長期停滞懸念は高まり戸籍制度に紐づいた社会保障制度の懸念が高まる恐れもある。政策期待への過剰な期待は禁物だろう。中国経済の先行きを楽観するのは早計とみる。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 多摩大学特別招聘教授 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。 ----------
多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫