松田龍平が「東京」という街に向ける意外な視線…「中国語の警察通訳人」を演じて見えてきたもの
大人になってからも居場所を作れる
──日本という異国に暮らす外国人居住者はもちろん、有木野をはじめとする主要キャラクターたちにとっての“居場所”も、本作のテーマのひとつだと思います。お二人にとって“居場所”とは、どういうものでしょうか? 奈緒「私は、自分が何者なのかが分かる場所が居場所だと思っています。それこそ、高校からの親友とか。ずっと一緒に来ているから、親友と話していると『あ、そうだ、私って、こういう人間だったんだ』って思える。大きいことで言うと、日本もそうですね。ここに生まれて、日本語を使っていて、日本食を食べていて、着物が好きって思ったり、三味線の音を聞くと落ち着いたり……自分が何者かが分かるから、ここが居場所だって、すごく思えるんです。その一方で、大人になってから、たとえば韓国に友達に会いに行って、韓国の友達と話しているときに、今まで知らなかった自分をフッと知る瞬間が訪れると、ここが居場所になったなって感じることもあります。居場所はたくさんあってもいいですよね」 松田「日本で生まれ育った僕は、日本が居場所ですけど、外国の人が日本に住むときには、居場所を自分で新たに作らなきゃいけない。そこには大きな差があると思います。でも、細かい話をしたら、仕事で新しい職場になるとか、新しい現場に行くとか、新しい人に出会うとか、それもやっぱり居場所を作っていくことなんですよね。新たな居場所は勝手に作られていくものじゃなくて、自分とそこにいる相手、お互いが作る努力をしなきゃいけないから。それで、自分を分かってもらって、相手を分かる。それが居場所を作ることにつながっていくんじゃないかなと思っています」
石塚 圭子