松田龍平が「東京」という街に向ける意外な視線…「中国語の警察通訳人」を演じて見えてきたもの
相手に気持ちを伝える方法を探り続けている
──本作では鴻田と有木野が、国籍や世代、置かれた立場も異なるさまざまな外国人と、真摯にコミュニケーションをとっていく姿が印象的に描かれています。ふだん“言葉”や“コミュニケーション”について意識されていることはありますか? 松田「言葉って、気持ちなので、テンション上がって、調子にのったことを言っちゃわないように気をつけないと、とか(笑)。かといって、お互いに空気ばっかり読んで、それぞれの壁を超えないようにして、結局何も起きずに……っていうのも、あまりおもしろくないから。特に仕事とか、深く関わるような場所のときは、やっぱりちょっと戦わなくちゃいけない瞬間もあったりするので、難しいなと思って。 本当に匙加減というか、その狭間をずっと探り続けているという感覚はありますね。別に仕事だけじゃなく、人に対して、傷つけないようにしているつもりが、逆に何かよそよそしく見えたりすることもあるし。人間として、一番いいバランスは何だろうな、っていうのは、意識しているかもしれない。しかも、人によって、感じ方がまったく変わってきますからね。まぁ、そこがおもしろさでもあるんですけど」 奈緒「同じ国の人でも、同じ言葉を持っているかどうかは、人によって違いますよね。たとえば『優しいね』という一言を相手に言ったとしても、私が思っているように相手に伝わるとはかぎらない。人はみんなそれぞれの個性を持って生まれてきて、そういう個性が異なる人たちが同じ社会で一緒に生きていかないといけないから。言葉というものを、どう使ったら、仲良くできるんだろう、ということはけっこう考えています」 松田「『いい人だよね』って言うと、ちょっとディスっているみたいになったりしてね。受け取る人がポジティブな人なら別にいいんだけど。いい人? それって、当たり障りのない人っていう意味かな……とか。どういうつもりで言ったのかなって、つい余計なことを考えちゃったりして」 奈緒「だからこそ、伝わったときは、やっぱりすごく嬉しいですね。海外の人と話すとき、もう会えない、あなたにまた会いたいという気持ちを『I miss you!』で伝えたりするんですけど、じゃあ、日本語でそれを言うかといったら、きっとそうじゃない言葉で伝えている。目の前にいる人に、どういう言葉で言えば、私の気持ちがそのまま伝わるんだろうって。言葉以外でも、気持ちを伝えるベストな方法をいつも探している感じです」