日本サッカー史に新たな歴史刻む…J1史上初の女性レフェリー山下良美氏のジャッジは両チームにどのように映ったか…長友の声は
FIFAが主催するU-17女子ワールドカップや女子ワールドカップに加えて、男性がプレーする大会として全国高校サッカー選手権大会などでキャリアを積み重ね、2019年12月のJFA理事会でついに1級審判資格が認定された。 日本フットボールリーグ(JFL)で経験を積んだ後の昨年5月には、J3で初めて主審を担当した。以来、必ずつけられる「女性初」という言葉を、プレッシャーとともに「目を向けてもらっていいと思います」とあえて受け入れてきた。 もっとも、山下さんの視線の先には大きな目標が描かれている。 「今後はJリーグでの機会を続けていくことと、女性レフェリーが男性の試合を担当することが当たり前になっていくことが、私の目標とすべきところだと思っています。そのためにできることは、目の前の試合へ常に全力で取り組むことだけです」 審判団を統括するJFAから割り当てられる、目の前の試合のひとつとなったFC東京と京都の一戦は、雨中の国立競技場に5万人を超える大観衆が詰めかけた。 「素晴らしい仕事をした。ワールドカップでも活躍を願っている」 試合後のフラッシュインタビューで、質問されるまでもなく自ら山下主審に言及したアルベル監督は、試合後の公式会見でも次のように言及している。 「(試合後に)彼女へ個別に讃える言葉を伝えた。初めてのJ1での試合、しかも国立競技場という舞台で、5万人に囲まれたなかで笛を吹くのはとても難しいことなので」 東のファウルに対して、なぜイエローカードを出さないのかと山下主審に食い下がった豊川も、試合全体に対しては次のように振り返っている。 「普通に試合をしている感覚でした。女性の主審だったから試合が変わったというのもなかったし、素晴らしいジャッジだったと思っています」 山下主審による取材対応は設けられず、JFAを通じてコメントが発表された。 「J1リーグのフィールドに立てたこと、大変光栄に、嬉しく思います。いつもサポートしてくださる皆様に感謝申し上げます。今後も魅力溢れるJリーグの発展のため、1試合1試合、真摯に向き合っていきたいです」 自らは決して目立つことなく、試合を円滑に進める上での黒子に徹する。主審の原則に立ちながら、前に誰もいない世界をこれからも全力で歩んでいく覚悟と決意がコメントから伝わってくる。もちろん、カタールワールドカップもまっすぐな道の過程にある。 (文責・藤江直人/スポーツライター)