ノーベル賞、シンギュラリティ、角幡唯介、箱根5区、死の現場…11月の気になるノンフィクション
『地図なき山:日高山脈49日漂泊行』 角幡唯介(著)
北極探検などで知られる探検家の角幡唯介さんの最新刊です。正直タイトルを見たときに「あれ、日本の山?」と思ったのです。ただ、この表紙画像を見ただけでもなんとなく恐ろしい感じがしてきます。なんと今回の探検は「地図を持たずに」のチャレンジだったとのこと。 最近はもう東西南北も確認することなく地図アプリを開き、そこまでのルートは検索結果頼み、という生活です。そんな現代人が地図のありがたみに気づくための本になるかもしれません。
『女たちがつくってきたお酒の歴史』 マロリー・オメーラ(著)、椰野 みさと(翻訳)
女性杜氏が誕生した、といったニュースの時に“酒の世界は男社会で…”という説明を聞いた記憶があります。確かにそんな印象を持っていたのですが、酒の歴史は女性によってつくられてきたようです。古代では酒の醸造は女たちの仕事で、「蒸留」の技術を見いだしたのも女性だったということのよう。一方で、発展とともに経済に近づくにつれ男たちが女性を排除したという動きもあるようです。酒✕女性という組み合わせに着目した歴史書。
『箱根5区』 佐藤俊 (著)
そろそろ箱根駅伝の季節になります。「箱根5区」は、箱根駅伝ファンでなくとも耳にしたことのある“山の神”が誕生する区間。近年では勝敗を左右するとも言われるようになりました。この山登りで伝説となった各大学の名選手たち、そして彼らに抜かれた側の選手たちにも取材し、人生が変わった瞬間とその後の人生を追ったノンフィクション。
箱根駅伝ものは毎年多くの本が出版されますが、今年は4月に池井戸潤さんの小説『俺たちの箱根駅伝』も話題になっています。こちらはフィクションですがあわせて読んでも楽しめるはず。
『ラトランド、お前は誰だ?: 日本を真珠湾攻撃に導いた男』 ロナルド・ドラブキン(著)、辻元 よしふみ(翻訳)
この本がデビュー作だという著者。なんと著者の父親の遺品整理中に、父親、そして祖父が米国のインテリジェンスとして活動していたことがわかったことが執筆のきっかけになったのだそう。 このラトランドは第一次大戦での英国軍の英雄であり、社交界での活動もあるセレブ、そしてまた日本軍とアメリカ軍の「二重スパイ」という様々な顔を持っていました。そして彼がもたらした情報が真珠湾攻撃、そして日米開戦に繋がっていったというのです。断片的な逸話が語られてきた存在でしたが、機密解除されたファイルによってスパイとしての全貌が浮かび上がってきました。スパイファン必読!