なぜジュビロ磐田はJ1復帰を果たしたのか…背景に“ゴン中山”の指導で磨いた攻撃力
シーズン始動を前に「選手たちに向き合って監督をサポートしながら全力を投じて、戦う集団にしたい」と語った抱負を愚直に実践し、黒子に徹してきた中山コーチをめぐる状況が一変したのは、2位の京都サンガをホームに迎えた7日の前節だった。 体調不良を訴えて検査入院した鈴木監督に代わり、先月下旬から服部ヘッドコーチが暫定的に指揮を執ってきた状況で西野コーチも発熱。幸いにも新型コロナウイルスには感染していなかったが、京都戦でのベンチ入りは無理と判断された。 代わりに初めてベンチ入りした中山コーチの存在は、配信された試合映像を介してすぐに確認できた。勝ち点2ポイント差で迎えた京都との天王山で何度もエキサイトし、ピッチ内の選手たちと思いをシンクロさせながら戦った中山コーチを、現役時代に磐田だけでなく日本代表でも共闘した服部ヘッドコーチは笑顔で称えている。 「しっかりと野次を飛ばしてくれて、いい雰囲気を作ってくれたと思います。指示だけでなく、私の目が届かないところにまで声をかけてくれて本当に助かりました」 中山コーチは京都戦で試合前のウォーミングアップを担当した。ともに無得点で迎えた後半32分に決勝ゴールを叩き込み、京都との勝ち点差を「5」に広げ、J1昇格へ王手をかける勝利を手繰り寄せた元日本代表MF山田大記は、中山コーチに関して「試合前はそわそわしていました」と苦笑しながら意外な一面を明かしてくれた。 「初めてのベンチ入りということで『何をしたらいいんだろう』と言っていました。ウォーミングアップの流れを仕切ってくれたのですが、それに関しても初めてだったので『大丈夫かな』と。もちろんしっかりやってくれていました」 負ければ京都に首位を奪われ、2位に後退する直接対決を前にして中山コーチが見せた姿は、普段とはまったく異なる分だけチームの緊張感を和らげたのかもしれない。 水戸戦では体調が回復した西野コーチがベンチに入り、中山コーチはこれまでと同じく磐田市内に留まった。それでも地道な指導を介して、特に攻撃面で今シーズンの磐田に寄与してきた跡は、リーグ最多の「71」を数える総得点に反映されている。 磐田が無得点に終わったリーグ戦は、引き分けた5月5日の愛媛FCとの第12節までさかのぼる。3シーズン目のルキアンは、昨シーズンの10ゴールから大ブレーク。J1時代を含めて初めて二桁ゴールに到達させた32歳の山田も声を弾ませる。 「正直、自分のなかで多少自信が揺らいだ時期もあったが、いまはJ1でもやれる自信がある。個人としてもチームとしても、来シーズンに何ができるのかが楽しみです」