なぜジュビロ磐田はJ1復帰を果たしたのか…背景に“ゴン中山”の指導で磨いた攻撃力
開幕戦でFC琉球、第2節で町田ゼルビアに敗れて連敗発進した今シーズンの磐田は、第6節から4連勝、第14節からは8連勝と鮮やかにV字回復。東京五輪による中断が明けてからは16戦無敗を継続したまま、安定感をさらに増して2位以上を確定させた。 6試合を残してJ1昇格の可能性が消滅し、6位で終えた昨シーズンとの違いに、ガンバ大阪から期限付き移籍して2シーズン目の元日本代表MF遠藤保仁はこう言及する。 「90分間を通して慌てずに戦えるようになったのが一番大きい。例えば負けている試合や同点で進んでいる試合で雑なプレーが少なくなった。自分たちはこう攻める、という意思統一ができていたので、攻め急いでドタバタする試合が少なくなった」 昨年10月に加入した41歳の遠藤が、J1昇格を逃した悔しさのなかでチームメイトの特長をインプット。今シーズン序盤の段階で「いい手応えをつかめた」とゲームメイクに自信を深めた状況へ、心技体の特に「心」と「技」で攻撃陣にアプローチし続けた中山コーチにもたらされた、いわゆる“ゴン効果”が融合された。 16戦連続無敗を振り返っても、4ゴールで快勝した松本山雅戦、ギラヴァンツ北九州戦もあれば、試合終了間際のゴールで逆転したツエーゲン金沢戦や大宮アルディージャ戦も、そして最少得点をしっかり守り切ったアルビレックス新潟戦や京都戦もある。 そして、強力な攻撃陣が猛威をふるうだけでなく、戦いを積み重ねながらしぶとさや勝負強さをも同居させてきた磐田が目指す“ゴール”はJ1への復帰だけではない。 「自分たちが残りの3試合を勝ち切れば優勝することはわかっている。次のホームでの長崎戦は昇格を決めた後に緩んだ試合をしないように、しっかり準備していきたい」 水戸戦前日の13日に退院したものの、経過観察のために引き続き静養する66歳の鈴木監督に代わり、暫定的な指揮を執り続ける服部ヘッドコーチは、もうひとつの目標として掲げてきたJ2制覇を見すえながら胸中に抱く本音ものぞかせた。 「とにかく早い段階でJ1昇格を決めたい気持ちがあった。マサさん(鈴木監督)を一日でも早く楽にしてあげたいというか、心配事をひとつでも減らせればと」 昨秋に16年ぶりに復帰した鈴木監督はファースト、セカンド両ステージを制した2002シーズンの指揮官だった。当時守備のスペシャリストとして活躍した服部ヘッドコーチの経験に、記録と記憶に残るゴールを刻んできた中山コーチの理論と情熱を加えながら、歴代4位タイの3度のJ1リーグ優勝を誇る磐田は名門復活を目指していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)