親は「争いになるような財産はない」と言っています。本当に相続対策は必要ないのでしょうか?
相続対策という言葉を聞くと、多額の資産をもった資産家が自分の死亡後に親族の遺産分割争いを避けるための対策というイメージがあります。しかし、資産の多寡にかかわらず、どんな人でも相続という行為は行わなければなりません。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる? したがって、相続対策は「亡くなった後に残された家族などの相続人が困らないように準備すること」と考えておく必要があります。 本記事では、そういった観点から相続対策の基本について解説します。
相続税の対策について
相続税とは、亡くなった人の財産を相続人が相続した場合に、相続人が支払う税金のことをいいます。亡くなってから10ヶ月以内に相続税の申告を行い、税金を納付する必要があります。 ただし、亡くなった方の財産のすべてに税金がかかるものではなく、基礎控除額部分や非課税資産などについては、税金が免除されます。基礎控除額の算出方法は以下のとおりです。 基礎控除額=3000万円+(法定相続人の人数×600万円) なお、課税対象となる財産には、現預金、株式や債券等の有価証券だけでなく、土地・建物等の不動産や死亡保険金、死亡退職金などの「みなし相続財産」なども含まれます。親が「争いになるような財産はない」と言っていたとしても、その財産内容によっては、基礎控除額を超える可能性もありますので留意が必要です。 いずれにしても、相続する財産については、なるべく基礎控除以内に納めるようにすれば、税金が免除されますので、以下の対策をしておくとよいでしょう。 1.生前贈与で財産を少なくしておく 年間110万円までは、贈与税がかからないので、生前に配偶者や子どもに財産を贈与して、相続する財産を減らしておくことができます。なお、相続開始前7年以内に贈与を行った場合には、その財産の合計額が相続税の課税価格に加算されるなどの相続税の法改正(改正前は3年以内)が行われるので、留意が必要です。 また、贈与の方法や非課税額の活用方法によっては、税務署から課税対象として指摘を受ける等の場合がありますので、法改正の内容理解も含めて税理士や会計士に相談するとよいでしょう。 2.相続税の特例制度を使う 「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などを活用することによって、課税価格を減額したり、一定額以下であれば配偶者の相続税を免除したりすることができます。これも生前贈与同様、税理士や会計士に相談するとよいでしょう。