エッグベネディクトは米ヒルトン発祥、ではナポリタンは? 「元祖」の3ホテル探訪
■国際港・横浜のおもてなし ホテルニューグランド
1859年に横浜は、函館、長崎と共に日本で最初の国際貿易港となった。1927年に開業したホテルニューグランド(社名はホテル、ニューグランド)のクラシカルなヨーロピアンスタイルの本館は、渡辺仁の設計による創業時からの建物で、横浜市の歴史的建造物と国の近代化産業遺産の認定を受けている。 初代総料理長サリー・ワイルは、スイス出身でヨーロッパ各地での修業後、パリのホテルから招へいされて来日した。ニューグランドのメインダイニングは、ワイルの本流を今に引き継ぐ本館のフランス料理レストランだが、同じくワイルが「パリの下町のような雰囲気で気軽に食事ができる店を」とオープンした「グリルルーム」から転じたコーヒーハウス「ザ・カフェ」もこのホテルの食事の顔である。
■ナポリタン、プリン・ア・ラ・モード広める
フランス料理のコース中心だった時代にアラカルトを提供し、体調を崩した外国人客のためにワイルが作った「シーフードドリア」や薫陶を受けたシェフによる「スパゲッティナポリタン」「プリン・ア・ラ・モード」は、ここから全国に広まった洋食メニューだ。 2024年4月にそんなワイルのモダンなフレンチスタイルを引き継いだ初のホテル直営ショップ「S.Weil(エスワイル) by HOTEL NEW GRAND」がホテルから徒歩1分の地にオープンした。レトルト、冷凍食品、焼き菓子やホテルメイドパンを扱っていて、ホテル発祥の「スパゲッティナポリタン」をサンドした「ナポパン プレミアム」が人気だ。 第2次世界大戦終戦後すぐに滞在した連合国軍最高司令官のマッカーサー元帥や創作のための定宿とした作家の大佛次郎など、著名人の宿泊も多い。ニューグランドでは、こうした歴史や伝統、本館の建築を満喫できる館内ツアー付き宿泊プランを出している。 ガイドをするのは筆記試験や実技試験を経て、幅広い知識を持つ特別な認定を受けた「ニューグランドマイスター」と呼ばれるスタッフだ。マッカーサーが執務に使用したデスクと椅子の置かれた「マッカーサーズスイート」などもニューグランドマイスターがマンツーマンで細やかに説明してくれる。 横浜は東京からもアクセスがよく中華街やみなとみらいには観光客も多数訪れる。その需要に対応するため、1991年に全館建て替えではなく本館隣に「ヨーロピアンエレガンス」をコンセプトにした新しいタワー館をオープン。新旧の魅力で応えている。