京大病院と日本IBM、遺伝性血管性浮腫の早期発見に向けた患者予測AIモデルを国内の電子カルテデータで検証
京都大学医学部附属病院(以下、京大病院)と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)、一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(以下、DISCOVERY)は9日、遺伝性血管性浮腫の早期発見に向けて、遺伝性血管性浮腫(以下、HAE)の患者予測AIモデルを、京大病院の電子カルテデータで検証完了したと発表した。 DISCOVERYは、希少疾患であるHAEと診断されずに症状に苦しむ患者のために、医療従事者、患者団体、製薬企業を中心に、2021年2月に発足した団体で、適切な早期診断および診断率の向上を目指す取り組みを行っている。同コンソーシアムでは、その取り組みの一環として、医療データAI分析ワーキンググループを立ち上げ、HAEの潜在患者を特定する診断を支援するための研究、および、その支援のためのAI開発を日本IBMと推進しているとのこと。 希少疾患というのHAEの特性上、モデル構築にあたっては、よりデータ量の多い米国の電子カルテ・レセプトデータを基にして、HAE患者予測AIモデルを開発してきたが、その一方で、国内医療機関への適用にあたっては、国内電子カルテデータでの検証が必要だったという。そこで今回は、京大病院が保持している電子カルテデータに対して、DISCOVERYおよび日本IBMが開発したHAE患者予測AIモデルを適用し、適用結果の予測精度や、HAEリスクが高いと提示された患者の傾向等についての評価を実施した。 HAEは、5万人に1人の有病率といわれている中で、新たなモデルを適用した今回の検証では、HAEの可能性が高いとして抽出された患者のグループにおいて、約5人に1人の割合で、HAEの確定診断、またはHAEの疑いがある旨の記録がされていたとのこと。 この結果から、これまでHAEの診断記録がない患者においても、同モデルの適用結果を活用することにより、HAEの早期診断に寄与しうることが考えられるとしている。 なお実証は、京都大学大学院医学研究科・医学部、および医学部附属病院 医の倫理委員会の承認後、2022年12月から開始され、その成果は、2024年9月に学術誌「JMIR Medical Informatics」にて発表されているとのことだ。
クラウド Watch,石井 一志