ルノーF1”エンジン”の歴史は本当に終わってしまうのか? PU開発凍結案に従業員側が改めて懸念を表明。経営陣への提案を公開
ルノー・グループは、2026年以降の新レギュレーション向けのF1パワーユニット(PU)開発を中止することを検討している。PU開発拠点であるヴィリー=シャティヨンの従業員らはこの動きに反発。事態を重く見たルノーのルカ・デ・メオCEOらは、従業員たちとの会談に臨んだ。ただ会談後に経営陣らが沈黙を続けていることに懸念を抱いたヴィリー=シャティヨンの従業員たちは、デ・メオCEOらとの会談の際に、会社側に提示した提案の詳細を公開することに踏み切った。 【ギャラリー】これでF1引退か? ダニエル・リカルドの全F1マシン ルノーはこれまで、長きにわたってF1用のエンジン/PUの開発を続けてきた。しかし近年のルノーのF1での成績は低迷。デ・メオCEOの言葉によれば「より競争力を手にしながらも、より安価なプロジェクトで新しいレギュレーション下のF1に参入するチャンスがあるかもしれない」という理由から、アルピーヌ名称の傘下チームとしてのF1参戦は続けつつも、他メーカーのPUを使う可能性を検討している。つまり、現在開発中の2026年仕様のPU開発は凍結される可能性があるということだ。 これについてヴィリー=シャティヨンの従業員らは、F1イタリアGPのグランドスタンドに詰め掛けるなどして抗議の意向を表明。この結果、デ・メオCEOをはじめとするルノーの経営陣が、9月20日(金)に従業員の代表者(CSE/社会経済委員会)と話し合いの場を持った。 この会談を受けCSE側は、依然警戒する必要はあるものの、議論は「建設的」かつ「質の高い」ものだったと評価した。 PU開発を中止するかどうかは、9月30日(月)に行なわれるルノーの取締役会での投票により決定される予定だ。その期日が迫る中、ルノーの経営陣側が沈黙を続けていることを受け、CSEは改めて懸念を表明。プレスリリースを発表し、次のような声明を出した。 「ルノー・グループが歴史的なヴィリー=シャティヨンの施設でのフランス製F1エンジンの開発停止に関する戦略的な決定を下すまであと数日。空は日に日に暗くなっている。現時点でこれについての反響はないが、9月20日にデ・メオ氏とスタッフ代表団が会談して以来、スタッフ代表団にはこれまで以上に人が集まっている」 CSEは経営陣に対する提案の詳細を明らかにした。会談でCSE側は、ルノー製PUを搭載したアルピーヌF1チームとして、2026年のF1に参戦することを求め、次のようなことを約束すると提案したという。 ・2026年までに、パワーユニットの競争力を高めることに尽力する。 ・F1でトップクラスの結果を残すことに尽力する。 ・2026年のマシンのテストが終了した後は、代替案に切り替えるかどうかは経営陣の判断に委ねる。 さらにCSEは、シャシーとパワーユニットの両方を対象とする新しいレギュレーションの枠組みの中で、エンジンを自社内で開発することの戦略的および競技的な側面に集中していると語った。 「この会談では、全てのメーカーにとって、エンジンを自社内で開発することについての重要性と課題に関する考察も、代表団によって議論された。実際、2026年から導入が予定されている新しいレギュレーションは、エンジンとシャシーの統合を促進し、メーカー間の技術的な選択の違いが強調される。エネルギーマネジメント(電気モーター、バッテリー、内燃エンジンのエネルギーマネジメント)の影響も2026年は大きく、主な開発分野として考慮されるべきだ」 「したがってこの規制では、シャシーとのより強力な統合と、技術的な独立性が必要になる。アストンマーティン(ホンダ)、レッドブル(フォード)、アウディのように、競争相手もこの移行に備えるため、パワーユニットメーカーに近づいている」 またCSEは、ルノーのF1エンジンの歴史が途絶えることは、モータースポーツにおけるフランスの伝統も失うリスクがあると強調した。 「決定期限が近付いている。9月30日の取締役会での投票の後、アルピーヌ・レーシングの変革計画は実行できるようになる。(PU開発計画が)放棄されれば、ヴィリー=シャティヨンという魅力的な場所の喪失、スキルと才能の喪失、世界的な影響力とフランスの伝統の消失など、その影響は多岐にわたるだろう」 「我々の情熱と決意は今も健在である。我々のF1のDNAを守ろう。どうか我々をサポートしてほしい」
Fabien Gaillard