「どうしてわかってくれないの?」パートナーとの関係性に「苦しい」と思ったら、するべきこと
自分が「タタリ神」になってしまっていると思ったら
――パートナーに対して、諦めていたり「どうせ言ってもわからない」という声を耳にしたりすることがあります。こういった状況からでも、パートナーシップを見直していくことはできるのでしょうか。 岩田「夫に対して恨みのような気持ちを抱いて、『もののけ姫』でいう“『タタリ神』になっているんです……”とおっしゃる女性に出会ったこともあります。 実は、産後のすごく辛いタイミングで“サンドイッチを買ってきて”といったら、“え、面倒くさい”と返事をされたことが、何年も経った今でもずっと許せないといった話を聞くこともある。その時に、“もう、あのサンドイッチしか食べられない! 痛くて元気が出ないし、あれがないと歩くこともできないよー!”という感じで主張をすれば、大抵の夫は“そうなんだ?”と言いながら買いにいきます。でも、多くの場合、そこまで重要なこととは気づかず、軽い気持ちで断ってしまうのです。 自分の大変さを理解されなかったり邪険にされたりしたことを、相手にきちんと伝えずにずっと握りしめて恨みが大きくなっていったのが、『タタリ神』の正体です」 下向「関係性は関わる全員で作っているものなので、パートナーだけが悪いのではなく、本来は双方の問題のはずですよね。相手が想像できる範囲は限られているので、ありのままの自分の気持ちは伝わっていない。恨みが残っていたら、時間差でもいいので蓋を開けて、“あの時、実はこういう気持ちで、すごく悔しかった”と話していくと、手放せることも多いように思います。 自分の気持ちに気づき、それを相手に伝わりやすいように伝えていくことは、まさにSELのアプローチです。“今更だけど、とても腹が立ってきたから言ってもいい?”と話し出す。親密な関係を築きたいのであれば、そういうことをしなければいけないのだと思います。恨みに蓋をしたら、腐っていくだけですからね」
打ち明けモードにならないときに必要なこととは?
――パートナーと「話し合った方がいい」と思いつつ、そこに難しさを感じる人もいるかもしれませんね。 下向「私もパートナーシップをより良くしたいと思っている女性のひとりとして、悩みに蓋をすることはよくないと感じつつも、思っていることを打ち明けるモードになることが難しくて。突然語り出したら、“え? 何を急に?”と相手が引いてしまう。こちらは話し合うモードに入っているのに、向こうは入っていない。結果として、私が一方的に伝えて終わることがよくあるなと、反省しているんです」 岩田「誰もが男性性と女性性を持っています。男性だから男性性だけがあるわけではなく、それぞれの特性を多め・少なめというグラデーションで持っています。最近は、女性の男性性がすごく強くなっているのではないかと感じます。男性性の特徴は競争的だったり、戦って達成感を得ようとしたりする傾向。一方で、女性性には調和や包み込むこと、柔軟さなどの特性があります。 現在のビジネスの現場はどうしても男性性が優位なので、女性も仕事をしている時は、“どうやったら達成できるか”や“速やかな意思決定”など男性的な脳をフル活用しています。しかし、それが強化されすぎると、家の中に男性が2人いるような状態になってしまう。 その状態でパートナーと関係性の問題について話し合おうとすると、“あなたができていないことを3つ挙げます”とか“今日で◯回目です。いつまでに改善するかを提示してください”といったコミュニケーションになってしまいます。すると、男性も戦うモードになって、衝突したり距離を置いたりする状況が生まれてしまうんです」 下向「私も完全にビジネスモードで家にいることに気がつきました。さらにいうと、家庭でトラブルがあると、会社の仲間たちとの会議の中でもそれが出てしまうみたいで……。家庭と仕事との切り替えは、どうしたらよいのでしょう?」 岩田「リモートワークが広がってとても便利になったのですが、その一方で家で仕事をしている人がビジネス脳のまま家庭にいることが増えました。通勤がモードチェンジの時間になっていたけれど、それがなくなったことで切り替えのタイミングを失ってしまったんです。 モードチェンジとして私が大推奨しているのはお酒を一杯飲むこと(笑)。それ以外にも、『甘いものを食べる』『体を動かす』など、自分がご機嫌になれることを挟んでいくことが大切です。 私が主催している講座では、自分がご機嫌になれるリストを作成しています。どんな時に気持ちが晴れるかを書き出していくのですが、お金や時間がかかりすぎることはNG。たとえば、『ハワイに行く』は時間もお金もかかりすぎてすぐには実行できないので除外します。『自分の好きなアロマの香りを嗅ぐ』『空を見上げて雲が流れていくのを見る』『大好きなコンビニスイーツを食べる』といったことを書き出していくんです。そして、実際に仕事と家庭のモードチェンジの際に実行していきます」 下向「ご機嫌になれることをリスト化していくことは、SELでいう自己理解や自己管理のスキルを上げていくアプローチだと感じました。 たとえば、SELにはエネルギーを得られる場面を想像する『リソーシング』というワークがあります。ぺットを撫でているときやお風呂に入っているとき、自然の中で木を眺めているときなど、自分のパワーを充電できるようなシーンをなるべく具体的に思い浮かべて、交感神経と副交感神経を整えていきます。つまり、自分がご機嫌になれることをイメージの中で実行していこうというアプローチです。