イリオモテヤマネコとカンムリワシ、餌を分け合い「ゆいまーる」で共存 琉球大
夏と冬で餌の中身に変化
その結果、夏と冬でフン中に含まれる餌の生物の構成に違いがあることが分かった。具体的には、夏のカンムリワシは両生類や甲殻類、昆虫類を多く食べるが、イリオモテヤマネコは爬虫類や鳥類をよく食べていた。冬はイリオモテヤマネコが哺乳類、両生類をよく食べる一方、カンムリワシは爬虫類や甲殻類、ムカデ類を多く食べていた。夏と冬で「食べ物」を変えることで、両者は共生に成功していた。長い歴史の中で、餌の奪い合いで絶滅しないよう、互いの餌を時期で食べ分ける生存戦略が奏功してきたといえそうだ。
これまで、イリオモテヤマネコとカンムリワシの死体の胃の内容物から何を摂っているか調べるというアプローチもあったが、カンムリワシの死体標本はなかなか見つからないため、この手法が使いにくいという問題があった。今回の研究で用いたフンを使ったDNAバーコーディングは「種」のレベルで83.5パーセントまで餌の内容を調べることができるうえ、季節ごとの餌を可視化できたという点でも大きな前進といえる。
研究結果について、伊澤名誉教授は「生き物の保全のためには食性のモニタリングは非常に重要。今回、カンムリワシのフンを集めるのに苦労したが、それでもまだサンプル数が少ないことが課題。今後も経年変化を調べていきたい」とした。また、「食物連鎖の上位がうまくバランスが取れていると、下位の生物のバランスも取れているといえる」としている。
研究は自然保護助成基金、プロ・ナトゥーラ・ファンド助成、日本学術振興会の科学研究費助成事業を受けて行われた。成果は英オンライン科学誌「サイエンティフィック リポーツ」4月2日に掲載された。
オーバーツーリズム 町が対策に乗り出す
沖縄県は観光で人気の土地だが、オーバーツーリズムの問題がかねてから指摘されてきた。2012年に国内線LCCが那覇空港に就航すると、観光客数は急増。2018年度には年間観光客が1千万人を突破した。移住先としても人気で、観光客の増加に伴い、マリンレジャーやネイチャーガイドといった観光業に従事する人も増えた。