国際宇宙ステーションから2人が帰還不能に、「取り残された」宇宙飛行士はどうなるのか
スペースシャトルの運航休止
2003年2月、スペースシャトル「コロンビア号」が大気圏への再突入の際に空中分解し、7人の宇宙飛行士全員が死亡する事故が発生した。これを受けて、NASAは安全が確保されるまですべてのスペースシャトルの運航を一時的に停止した。 NASAの措置は2年間続いたため、2003年3月にスペースシャトル「アトランティス号」で地球に帰還するはずだった2人の米国人と1人のロシア人宇宙飛行士も戻れなくなり、ISSに取り残された。その後3人は、予定よりも3カ月間長く滞在した後、同年5月に、ロシアのソユーズに乗って地球に帰還した。 スペースシャトルが飛ばなくなったことで、ISSにドッキングできる宇宙船はロシアのソユーズだけとなった。ところが、そのソユーズにも問題が発生し、ISSの乗組員交代が遅れることがあった。2018年10月には、ソユーズMS-10の打ち上げ直後に問題が発生し、計画が中止された。 しかし、ロシア国営の宇宙開発企業ロスコスモスは、こうした遅延があっても詳細をほとんど明かさず、飛行計画は頻繁に変更されていると、NASAの元宇宙飛行士クリス・ハドフィールド氏は言う。 同様の事故で最も劇的な展開を見せたのは、1970年にアポロ13号に起こった出来事だ。6日間の月への有人飛行に飛び立ったアポロ13号だったが、3日目に酸素タンクが爆発した。 命の危機にさらされた3人の乗組員は、月面着陸船を救命ボート代わりにして地球への帰還を試みた。大気圏に再突入する直前、3人は高温に耐えられる司令船に戻って着陸船を切り離し、1970年4月17日、無事に地球の海に着水した。当初の予定よりもおよそ14時間遅れでの帰還となった。
熟練宇宙飛行士
米南カリフォルニア大学の宇宙航行学教授であるマイク・グラントマン氏は、宇宙飛行士の宇宙滞在が予定よりも長引いたとしても、通常は特に問題ないと話す。 年齢が高いと、微小な重力の環境で筋肉量や骨密度が下がり、健康に影響が出る場合があるものの、今回のように熟練した宇宙飛行士の問題への対処能力が発揮されることもある。 地政学的な問題が宇宙飛行に与える影響も忘れてはならない。現在のロシアとウクライナの戦争により、宇宙飛行士を帰還させるためのソユーズの緊急打ち上げを検討することは、非現実的な状況になっている。