北海道に暮らす8割世帯が加盟。「生活協同組合コープさっぽろ」の物流ネットワークと資本主義の先をいく考え方
配達担当者各自が毎週組合員さん向けに発行しているチラシ。お便りのような感覚で手書きし、おすすめの商品を記載するなどのコミュニケーションツールとして活用されている。
自宅のそばで、買い物を
一方で「このサービスがなかったら私は生きていけない」と多くの利用者が口にしたのが、移動販売「おまかせ便カケル」である。コープさっぽろの店舗から約1000種類もの商品を2トン車に積んで、週に一度各エリアをまわる。 現在、道内全179市町村のうち138市町村で3000コース、96台が運航中。延べ10万人が利用している。
宅配サービスでこと足りるのではと思われがちだが、宅配トドックは2週間前が注文の締め切りで、冷凍品は多いが生鮮品が少ない。カケルのほうは店で買い物するのと同じ感覚で、自分の目で見て買い物ができる。便利でかつ買い物の楽しみが味わえて、生ものや惣菜も買える。その日に必要な食材の買い足しもでき、欲しいものを伝えておけば次回積んできてくれるといった御用聞きもしてくれる。要は「ちょっとそこまで」の買い物ができない人にとって貴重なのだ。 この移動販売車に同行させてもらうと、どれほど利用者の生活に欠かせないものなのかがわかってきた。 軽快な音楽がかかると、それを合図に買い物袋を下げて一人、また一人と姿を見せる。高齢者が多く、なかには足が不自由な人も。「これがないと生きていけない」と話す人も一人や二人ではなかった。
この日、販売員をつとめていたのは、藤野店の岸本規子さんと札幌地区リーダーの細木瑞世さん。長年、移動販売車で販売をサポートしてきた細木さんはこう話していた。 「札幌市内でもこれだけ利用する方がいらっしゃるので、北海道の端っこの地域では余計に感謝されます。握手を求められたこともありました。一方で、頼まれていた品を忘れたりすると、その方の生活への影響も大きいので慎重になります」 北海道の冬は雪深い。宅配トドックも、移動販売「おまかせ便カケル」も組合員の食生活を支える貴重な手段になっている。運転ができない高齢者にとっては切実で、そのぶん、一人一人の心のうちでコープさっぽろの存在は大きいはずだ。
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