北海道に暮らす8割世帯が加盟。「生活協同組合コープさっぽろ」の物流ネットワークと資本主義の先をいく考え方
Amazonに負けない物流網を自前で
その後、代表理事になった大見さんは、必死で再建の道を歩む中で次々に大胆な投資をしてきた。その一つが物流事業。2013年には北海道ロジサービスという関連会社を設立し、物流の自前化を進めてきた。 「2014年ごろにAmazonの物流倉庫を見に行った時、コープさっぽろは、物流面でAmazonより勝算があると気付きました」 当時のAmazonでは常温の商品30万品目からピッキングをして自宅まで届けていた。1個の品の注文が全体の85%を占めるため、1個を一軒に届けるために相当な物流コストをかけている。 「でもトドックは、週に1度のまとめ買いのサービスなので、平均13~15点を一度に運びます。一回の販売額は5000円を超える。その点を比較したら、物流コストでは勝てると確信しました」 勝算があると踏んだ大見理事長は、トドックでの取り扱い商品を2万品目まで増やそうと決める。全国の生協の取り扱い品数の平均は4000品目ほど。それに比べると、5倍の品ぞろえだ。たとえば筆者も加盟する九州の「グリーンコープ」では、大手飲料メーカーの缶ビールなどは取り扱いがないが、コープさっぽろでは買える。「大型スーパーとドラッグストアの売上の90%を占める商品を、トドックでも買えるようにする」方針だ。 2018年、取り扱い商品を増やすためにノルウェーから自動ピッキングの機械を導入。これによって、道内のどんなに不便な地域でもコープさっぽろを通せば生活するには困らないほどの品をトドックで選べるようになった。
今では中心の江別物流センターに加えて、道内に22カ所の物流センターを構える。 もともとはコストでしかなかった物流が、他社からの受託も始めて利益を生む事業になった。21年には「サッポロドラッグストアー」の全物流業務を受託し、200店舗に商品を配送しているほか、良品計画などの物流も始まり、外販の比率は35%にまでなっている。 この物流センターを運営するのは、コープさっぽろの関連会社である「北海道ロジサービス株式会社」。専務取締役の髙橋徹さんはこう話す。 「物流の自前化を進めてきましたが、いま運送会社の子会社化も同時に進めています。人手不足でこの先、配送できる人員が不安定になりつつあるため、しっかり自社で確保しておきたいためです」 北海道内の物流網が整い、コープさっぽろは物流会社であると同時に、組合員の生活インフラにもなっている。
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